流山児★事務所(東京)×OFFICE30(香港)国際共同制作公演
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- 作:寺山修司
- 演出:流山児祥
- 音楽:本田 実
- 振付:北村真実
- 衣裳:バッカス・リー
- 照明:横原由祐(シアタークリエイション)
- 音響:島 猛、齋藤貴博( ステージオフィス)
- 出演:沖田 乱、V. 銀太、イワヲ、甲津拓平、里美和彦、武田智弘 ・・・・・日本;E-RUN、王 美芳、秀妹、カイリ・チョイ、洪 珮菁、陳 彩旋 ・・・・・・香港
- 上演時間:1時間20分
- 劇場:早稲田 大隈講堂
- 評価:☆☆☆
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早稲田の大隈講堂での特別無料公演。このあと、仙台、札幌、そして中国三都市で公演がある。
無料ということもあり、大隈講堂は二階席まで埋まっていた。1000人弱ぐらいの観客がいたかもしれない。
『狂人教育』は1962年、寺山がまだ26歳のころに書かれた戯曲で、人形劇団ひとみ座が初演している。オリジナルの人形劇バージョンの上演もいつか見てみたいものだ(プークの大人劇場あるいは結城座あたりで)。
流山児★事務所から作品概要を引用すると「平凡なある家族が、遺伝的要因から家族のうちに1人狂人がいると医者に宣告を受ける。自分が狂人と見なされることを恐れ、家族たちはそれぞれの身体的、肉体的なハンデやコンプレックスを隠し、画一化された行動を取り始める」というお話である。
流山児★事務所の今回の公演では、人形によって演じられた家族を人間の役者が演じる、しかも中国人の女優が北京語で演じる、人形ぶりによる公演なのだ。このアイディアは面白い。中国人女優はそれぞれ京劇風(?)の化粧をして、様式的な動きをする。日本人の男優 6人は黒衣を着た人形遣いとなる。冒頭、腹話術師が大きなトランクから人形を取り出し、かくかくとしたぎごちない動きの人形ぶりから芝居がはじまる。しかししばらくすると人形遣いは舞台から退場し、人形であった中国女優たちが自律的に動き始める。この作品は音楽舞踊劇でもあり、場面場面で歌唱と舞踊が入る。こうした場面での中国人女優たちのパフォーマンス能力がすばらしかった。最後の場面の仕掛けもいい。最後の最後に人形遣いと人形(中国人女優)たちの役割が一瞬で入れ替わり、人形たちは自由になって舞台上から客席通路をかけぬけ一気に退場していく。一方、人形遣いたちは自由を奪われ、舞台上で硬直したままになる。
要所要所の工夫はこのように面白いところがあったのだけど、全般的には退屈で1時間20分の上演時間のうち、40分ぐらいは眠ってしまった。大隈講堂は演劇用のホールでないため、照明設備が貧弱だったり、舞台の奥行きがあまりなく役者の動きが窮屈になってしまうという制約はあるのだけれど、舞台空間が殺風景で面白みに欠ける。アングラ演劇的な濃厚さに乏しい、貧弱ですかすかした感じの舞台が単調だった。
場面と場面をつなぐロジックに説得力が乏しいというか、有機的にシークエンスが連なっているように感じられない。細部の処理、解釈が雑できっちりと神経が行き届いた舞台って感じがしない、ってのはこれまでに見た流山児★事務所のどの芝居でも感じた不満だ。部分的な表現のアイディアには感心するところはあっても、トータルでの印象は、これまで見た流山児★事務所作品同様、もやもやとした不満が残る、すっきりしない舞台だった。