閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

瀕死の王

http://www.owlspot.jp/performance/080928.html

  • 作:ウジェーヌ・イヨネスコ
  • 演出:佐藤信
  • 美術:佐藤信
  • 照明:黒尾芳昭
  • 衣裳:岸井克己
  • 音響:島猛
  • 訳:佐藤康
  • 出演:柄本 明、佐藤オリエ、高田聖子、斎藤 歩、谷川昭一朗、松元夢子
  • 企画:鴎座
  • 上演時間:2時間15分
  • 劇場:東池袋 あうるすぽっと
  • 評価:☆☆☆★
                                                                                      • -

佐藤信演出でイヨネスコとなると頭でっかちで厳しい舞台になりそうだなぁという予感がした。事前に戯曲を読んでおいたのだが、これが全然面白くない。電車の中で読んでいると10ページも読まないうちにまぶたが落ちそうになる。これを佐藤信がさらに晦渋なもったいぶった表現にしていくのだろうなぁ、柄本明はどういう具合に王様を演じるのかだいたい見当がつくな、などと思って見る前からちょっと気分が乗らない。

悲実際の舞台は思ったよりは楽しむことができた。といっても2時間15分の上演のうち、最初の1 時間ほどは何回もうつらうつらとしてしまったが。観客として僕は耐久性がないほうだ。舞台照明が暗めで、単調なリズムの芝居だと簡単に眠ってしまう。

よかったのは戯曲のト書きの指示をがらんと広いあうるすぽっとの舞台に敷衍した美術。佐藤信の美術のセンスはほんとうに渋くてかっこいい。玉座の上にある大きな丸い壁掛け時計の使い方(舞台進行と同時に針が進んでいく)がとても印象的だった。
その作為が鼻につくことが多い柄本明の誇張気味、アドリブ風の喜劇演技が、展開の単調さに変化を与えていた。柄本以外の役者もみんな達者だ。佐藤オリエは、始終、意地悪で冷淡、仮面をかぶったままのような王妃のキャラクターをきっちりと作っていた。文字で読んだときはだらだらと連なり退屈きわまりなかったテクストの内容も、ちゃんと観客に届けるような工夫がされていた。あの無味乾燥でとらえどころのないテクストからこんな演技を引っ張り出すのだから、プロの役者の想像力というのはたいしたものだなと感心した。また看護婦・侍女役の松元夢子の演技がとてもキュートで可愛らしい。ルックスもちらしの写真よりも実物のほうがよっぽど可愛い。