閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

Un Tramway トラムウェイ

http://www.theatre-odeon.fr/fr/la_saison/les_spectacles_2009_10/accueil-f-321.htm

  • 原作:テネシー・ウィリアムズ Tennessee Williams 『欲望という名の電車』より
  • 演出:クリストフ・ワルリコウスキ Krzysztof Warlikowski
  • フランス語版台本:ワジディ・ムアワッド Wajdi Mouawad
  • 翻案:クリストフ・ワルリコウスキ Krzysztof Warlikowski
  • 翻案協力 : Piotr Gruszczynski & Wajdi Mouawad
  • ドラマトゥルク : Piotr Gruszczynski
  • 美術・衣裳 : Malgorzata Szczesniak
  • 衣裳協力 : Cédric Tirado
  • 照明 : Felice Ross
  • 音楽 : Pawel Mykietyn
  • メイク : Luc Verschueren
  • ビデオ映像 : Denis Guéguin
  • 音響 : Jean-Louis Imbert
  • 出演:イザベル・ユペールIsabelle Huppert, Andrzej Chyra, Florence Thomassin, Yann Collette, Renate Jett, Cristián Soto
  • 上演時間: 2時間35分
  • 劇場:オデオン劇場 Théâtre de l'Odéon
  • 評価:☆☆☆☆☆
  • チケット代:5ユーロ 当日立ち見券@劇場窓口

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
エキセントリックな魅力を放つフランスを代表する「変態」女優、イザベル・ユペール主演、ポーランド人演出家ワルリコウスキによる「Un Tramway」を見た。テネシー・ウィリアムズの『欲望という名の電車』の翻案であるが、原作に強烈なデフォルメが加えられている。フランス語版台本は、六月に静岡の芸術祭で作品が上演されるベイルート出身、カナダ在住の劇作家、ムアワッドによるものだ。とんがった現代劇を上演している国立劇場、オデオン座での公演。1000人ほど入る劇場だ。一ヶ月以上にわたる公演期間だが人気公演でウェブでは全日程売り切れだった。開演二時前に発売される当日立ち見券で見た。立ち見席で5ユーロ。空いている席があったので実際には上演後移動して座って見ることができた。
これは期待通り、強烈に刺激的、挑発的な「欲望」だった。三条会関美能留がもし莫大な予算を手に入れて舞台を作ったら、こんな独創的で奇天烈でしかも原作の本質をぐっとつきつけられるような舞台を作るかもしれないなあ、などと想像してしまうような舞台だった。舞台美術のかっこよさ、洗練ぶりは驚くべきものだ。そしてユペールのブランチ像も期待を裏切らない。エキセントリックでぶっ壊れていていてエロい。うーん、彼女のようなタイプの女優、日本にいるかなあ。映画だけでなく舞台でも凄い。大女優でかつ一流の変態だ。異色で破壊的で強いデフォルメは加えられているけれど、「欲望」の核となる部分をぐっと押しつけられるような公演だ。現地の劇評では酷評もある。しかし今のパリの演劇の最先端を感じさせる舞台であるように思った。私は大いに満足する。