閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

Mystère bouffe et fabulages 『滑稽な聖史劇、そして作り話』

  • 作:Dario Fo
  • フランス語翻訳:Ginette Herry, Valeria Tasca, Claude Perrus Agnès Gauthier
  • 演出:Muriel Mayette
  • 美術・照明:yves Bernard
  • 衣裳:Virginie Merlin
  • 音楽:Arthur Besson
  • ドラマテュルク:Laurent Muhleisen
  • 出演:Yves Gasc, Catherine Hiegel, Véronique Vella, Christian Blanc, Alxandre Pavloff, Hervé Pierre, Stéphane Varupenne, Chrisitian Hecq
  • 劇場:Comedie Française
  • 評価:☆☆☆★
  • チケット代:11 euro 3階バルコニー席中央 劇場サイトで購入
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イタリア人のノーベル文学賞作家、ダリオ・フォの作品をコメディ・フランセーズに見に行った。入りは7割ぐらい。あんまり人気はないようだ。
原題はMystere bouffe et fabulages. Mystereは英語のmysteryと同語源だが、ここでは「神秘」とかの意味ではない。中世演劇で聖書から題材をとった宗教的演劇がミステールと呼ばれた。聖史劇と最近は訳されることが多い。この聖史劇のなかでも特にイエスの受難の場面を扱った芝居がpassionで「受難劇」と訳される。

ダリオ・フォは中世の民衆演劇のスタイルを現代演劇のなかによみがえらせようとしているらしい。fabulageは「fable」(物語、寓話)から作った造語で「お話作り」といった意味になる。ジョングルールと呼ばれていた中世の芸人を何人もの役者が演じる。それぞれ黒装束に身を包み、素舞台の上で様々な声色とゼスチャーを使って、イエスの受難や聖書に関係する説話や荒唐無稽な笑い話を口演する。まさに中世の芸人、ジョングルールがやったであろうありかたでお話を語るのだ。各ジョングルールの語りの間に、紗幕の向う側の舞台の奥ではイエスの受難の演劇として再現される。聖なるものと俗なるものの二つが混交し、互いに作用し合う芝居だ。

中世演劇を研究している私にとっては非常に興味深い公演であった。が、素舞台での語りは、役者の熱演ぶりにもかかわらず、こちらの聞き取り能力と集中力の不足のため、しばしば眠りに落ちてしまった。うーむ。観客にはそれなりに受けていたのだけれど。体調万全のときにもう一度見たい。


マチネにダリオ・フォを見て、ソワレは同じ劇場でコルネイユの「イリュージョン・コミック」を見る予定だった。ところが開演30分前にお腹の調子がおかしくなってしまう。でトイレに急行。そのあと、一応席についたのだけれど、お腹のごろごろが気になって仕方ない。チケット代は26ユーロ。座席はよりによって二階のバルコニー、最前列のど真ん中である。開演してから席を立って退場するのはかなり勇気がいる場所だ。どうしようか、がまんできるかどうか、迷ったのだけれども、こんな状態で芝居を見ても楽しむどころではないと思い、結局開演直前に劇場を出て、そのままホテルにもどった。創立以来300年を超えるコメディ・フランセーズの伝統を、26ユーロのために汚しては大変なことだ。
うーん、もったいないけど仕方ない。残念だ。その後のお腹の状態からすると結果的には退場して正解であった。