閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

さいたまゴールド・シアター「聖地」に至る長い道

松井周作、蜷川幸雄演出のさいたまゴールド・シアター「聖地」の評判がtwitterなどでとてもいいので観に行くことにした。前売りは売り切れなので当日券狙い。劇場に問い合わせると20枚くらいは出るとのこと。わざわざさいたままで行って売り切れでは悲しいので、当日券売り出し時刻である開演1時間前より前に劇場に到着するように家を出た。12時50分ごろ劇場に到着。開演は14時だ。開場していないのにやたら劇場の周りに人が多い。もしかして皆当日券ねらいか?劇場入口はすでに開いていて当日券も販売していた。あせる。劇場の人に、
「あの『聖地』の当日券なんですが」
と聞くと
「整理券は持ってますか?」
と尋ねられる。電話で問い合わせたときには整理券の話なんかなかった。
「いえ」
「もしかすると当日券が出ないかもしれません。それでもかまわないなら並んで下さい」
と言われる。うう、やっぱり凄い評判なのだろう。しかし当日券売りは開演1時間前なのにこの慌ただしさは何だ、と思ってポスターを見ると本日の開演は13時からになっている。どうやら私が開演時間を勘違いしていたらしい。早めに来ておいて正解だった。

当日チケットは何とか入手できた。1999円だった。当日券は安いのだろうか。当日券が安いのは日本の公演では珍しい。自由席だった。ほぼ満員の劇場に入る。入って間もなく劇場内が暗くなり、ステージが始まった。

バッハの《ロ短調ミサ》の《キリエ》が流れる。洋装喪服を着た十数人の女性が荘厳な音楽の響きにあわせ、見事なアンサンブルの群舞を踊る。喪服から延びる白い腕が幻想的だ。なるほど『聖地』という主題からこうしたオープニングを持ってきたのだ。《キリエ》の歌詞は「主よ、哀れみたまえ」だ。現代版姨捨伝説らしい作品のオープニングとしてはぴったりではないか。バッハのミサ曲に合わせてこうした大規模なバレエをまず観客に見せるとは。これは死んでしまった者たち、死にゆく者たちへのレクイエムだ。レクイエムから始まる物語。かっこいい。さすが蜷川演出だ。松井周にはこうした方向の発想センスはないだろう。それにしても整然とした見事なダンスだった。

と感心しながら見てると次の場が始まった。今度もダンス。
老人とは思えない見事な動きに魅了される。背景には戦場風景、911のワールドトレードセンターテロの映像などが流れる。なるほど死と世界の破滅を観客に強く印象続けようとしているのだろう。しかし二場続けてダンスとはいくらなんでもしつこすぎるような。こんなことをやっているから3時間を超える舞台になってしまうのか。

とか思ってると今度は女性の群舞。背景はゴーギャン「我々はどこから来たのか」。
「ん」
ここでようやく自分が劇場を間違えたことに気がつく。小劇場での公演のはずなのにここは大劇場だし、入場前に外で見たポスターには「La Terra」と書かれていた。ポスターのタイトルはいぶかしく思ったのだけれど、「La Terra=大地って意味か? 『聖地』のイタリア語(?)版タイトルなのかな」などと思ってしまったのだ。『聖地』以外の公演が行われているなどとはまったく考えていなかったので。

はるばるさいたままでやってきて別の公演会場に入ってしまうとは。がっくり落ち込む。自分の間抜けさに脱力する。あいにく会場はほぼ満席で外に途中で出にくい雰囲気。うー、このままこの公演を観て帰ることになるのか、と思っていたら、45分で第1幕が終わり休憩が入った。
『聖地』の開演は14時。まだ間に合う。隣の小劇場に移動する。当日券は購入できた。通路に座布団と言われたけど、実際にはパイプ椅子だった。側面の座席だったがエプロンステージだったので背景は死角になったが、ほぼ問題なく芝居を楽しむことができた。
ああよかった。

私が勘違いして見ていたのは下の団体のステージだった。
HOME | DANCE TROUPE Earth-Be official website*