閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

ドニゼッティ《ランメルモールのルチア》Lucia di Lammermoor(1835)

METライブ・ビューイング

  • 作曲:ガエターノ・ドニゼッティ
  • 台本:サルヴァトーレ・カンマラーノ
  • 原作:ウォルター・スコット 『ラマムアの花嫁』(英:The bride of Lammermoor、1825年)
  • 指揮:パトリック・サマーズ
  • 演出:メアリー・ジマーマン
  • 出演:ナタリー・デセイ(ルチア)、ジョセフ・カレーヤ(エドガルド)、ルードヴィック・テジエ(エンリーコ)、クワンチュル・ユン(ライモンド)、マシュー・プレンク(アルトゥーロ)
  • 上演時間:三時間半(休憩二回を含む)
  • 劇場:メトロポリタン劇場(上演日2011年3月19日)
  • 評価:☆☆☆☆☆
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ジマーマンとデセイの組み合わせの舞台を見るのは、二年前にやはりMETライブビューイングで見た《夢遊病の女》に続きこれが二作品目。
ランメルモールのルチア》で目をひくのは大劇場のスペクタクルならではのダイナミックな美術の転換である。一幕ではスコットランドの荒野、二幕では貴族の館の室内とホール、三幕では階段のあるホールと墓場。巨大なセットが場面毎に姿を変えていくさまは圧倒的だ。物語の時代は、オリジナルの小説では十七世紀となっているらしいが、この公演では作品上演当時の十九世紀前半に移動している。人物の心理が掘り下げられ、丁寧な描写によって文学的な陰翳が与えられている。デセイ演じるルチアの精神は脆く、二幕以降はほとんど虚脱しているかのように見える。悲壮な場面に必ず牧歌的な明るさを持つ、軽やかな長調の旋律を持ってくる対比の効果が素晴らしい。二幕目のアリア、デュオ、三幕目の「狂乱の場」で舞台を支配する緊張感がたまらない。頭の芯がじんじん痺れるような興奮を味わうことのできる舞台だった。