閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

ギリヤーク尼ヶ崎 青空舞踊 川越公演

http://gilyakamagasaki.com/2012/11/30/info_20121130/
ギリヤーク尼ヶ崎の舞踊公演を観るために、川越の成田山川越別院という寺にいった。喜多院という大きな寺のすぐそばにある。東武東上線川越駅から歩いて二〇分ほど。曇りの冬空の寒い日だった。予告された開始時間である14時の30分ほど前に会場に到着した。客はその時点では15人ほどだったので、最前列の場所を確保することができた。

14時、ほぼ時間通りにギリヤーク尼ヶ崎が登場。ゆっくりと着替えと化粧を行う。客は最終的には70名ほどだったと思う。
演目は10月に見た新宿と同じだった。エア三味線の「じょんがら一代」、女性と踊る「よされ節」、そして「念仏じょんがら」。灰色の冬空の背景に、ギリヤーク尼ヶ崎の衣装の赤と黒がよく映える。また寺の境内というロケーションもいい。
最後の「念仏じょんがら」で首にかける長い数珠を忘れていたというハプニングがあった。踊りながらトランクをまさぐり、ネックレス数珠を取り出して、何とか流れは止まらずにすんだ。終わったあとでギリヤーク尼ヶ崎自身が話していたのだが、彼もこういう経験ははじめてで踊りの順序を忘れてしまうほどあせっていたそうだ。

この寒い中、心臓にはペースメーカーが入った82歳の老人が走り回り、水をかぶり、のたうち回るさまは圧巻で心打たれる。観客の多くはこれがもしかして最後かも知れないと思い見に来ているだろうし、ギリヤーク自身も88歳まで踊ると宣言しつつも、一回一回の踊りが最後になるかも知れないという覚悟のもと、踊っているに違いない。11月中旬に予定されていた踊りは彼の体調不良のため、中止になっている。

パフォーマンス自体は10月の新宿のほうが勢いが感じられた。観客も今日よりはるかに多かったし、ギリヤーク尼ヶ崎の体調もよさそうだった。しかし冬空、寺の境内という絶好の環境のなかでの、ある面、極めてマゾヒスティックなパフォーマンスのインパクトは強烈であり、川越まで見に行った甲斐はあった。