- 演出:ユディ・タジュディン (俳優・スタッフ一同の構想に基づく)
- 作:ミヒャエル・エンデ
- 訳:矢川澄子 (岩波書店刊『サーカス物語』より)
- 舞台監督: 村松厚志
- 舞台装置:深沢襟
- 衣裳デザイン:駒井友美子
- 音楽:イェヌー・アリエンドラ
- 歌唱指導:戸﨑裕子
- 音響: 加藤久直
- 照明デザイン: イグナティアス・スギアルト
- 出演:阿部一徳、瀧澤亜美、榊原有美、大道無門優也、若宮羊市、たきいみき、永井健二、布施安寿香
- 劇場:静岡芸術劇場
- 評価:☆☆
ミヒャエル・エンデ原作で、原作も戯曲形式で書かれているらしい。演出はインドネシア人のユディ・タジュディン。
立ち退きを命じられたサーカス団がある。団員たちはどうしようもできず、ただ動揺するばかり。サーカス団には知的障害を持つ少女エリが数年前から一緒に住んでいた。エリがどうしてサーカス団で生活するようになったのかはよくわからない。アル中の中年ピエロ、ジョジョが、保護者のようにこのエリを可愛がっている。団員の不安はエリにも伝わり、エリも怯える。エリはジョジョにお話をするように求める。 ジョジョがエリにした話が劇中劇として展開する。そのお話の世界ではエリは王女、ジョジョは王子となっているのだが、大蜘蛛アングラマインによって彼らの世界の平穏も脅かされている。
少女エリ役を演じてた布施安寿香さんが素敵だった。彼女が具現していたのはか細く弱く、怯える無垢な少女であり、彼女は精霊あるいは亡霊のようにはかない。希望も持つことが難しい人たちが持つささやかの希望が投影されているかのような存在だ。 観劇中は彼女ばかり、目で追っていた。
しかし作品としては面白い作品ではなかった。演出も美術も脚本も音楽も、私の好みではない。子供向けのファンタジーでもあるはずなのだが、物語構造がとてもわかりにくい。わかりにくくなったのは、現実と空想の世界を行き来させる上での演出の不手際が原因だし、あとは脚本のことばがわかりにくい。美しい詩句であったかもしれないけれど、演劇のことばとしては成立していないように私は思った。役者はそれぞれ言い方を工夫していたけれど、各々が勝手に考えてやっているかんじがして、アンサンブルの感覚が乏しかった。
美術もよくない。大蜘蛛の自転車といい、富士山をイメージせずにはいられない巨大な布絵で表現された谷といいセンスが感じられない。全体的に見てもすかすかの空間に雑然とパーツが舞台に並んでるだけで、イメージの核となる部分がない。照明も始終暗め。音楽もありきたりの子供向きミュージカル、耳障りのいい童謡風で面白くない。