ぼくたちのムッシュ・ラザール MONSIEUR LAZHAR
- 上映時間:95分
- 製作国:カナダ
- 初公開年月:2012/07/14
- 監督:フィリップ・ファラルドー
- 製作:リュック・デリー、キム・マクロー
- 原作戯曲:エヴリン・ドゥ・ラ・シェネリエール
- 脚本:フィリップ・ファラルドー
- 撮影:ロナルド・プラント
- 編集:ステファヌ・ラフルール
- 音楽:マルタン・レオン
- 出演:フェラグ、ソフィー・ネリッセ、エミリアン・ネロン、ブリジット・プパール、ダニエル・プルール
- 評価:☆☆☆☆
日本の小学校6年生にあたる子供たちの教室風景を撮影するスタイル、子供たちの演技のリアルさは、2010年に公開された『パリ20区、ぼくたちのクラス』を連想させた。『ぼくたちのムッシュ・ラザール』の教室も様々な人種の子供たちがいるが、舞台はカナダのフランス語圏、ケベック州のモントリオールである。
小学校の教室で担任の若い女性教師が首つり自殺をする。その様子を二人の子供が目にしてしまった。教室で教師が自殺というスキャンダラスさゆえに、自殺してしまった女性教師の後任がなかなか決まらない。そんなとき、アルジェリアから移民してきたという男性が校長室を訪れ、自分を教員と採用するよう校長に申し出る。アルジェリアで長年にわたる教員としての経験があると言うのだ。校長は彼を採用する。
ベテラン教員だというその男の教員ぶりは、モントリオール社会の常識とは少々ずれたところがあって、ぎくしゃくとしてかみ合わないところがあった。不器用ながらも男は、子供たちと誠実に向かい合おうとしていることは感じられるが、その態度には、穏やかな表情にもかかわらず、他人を拒絶するような壁があった。
担任の教師が自殺したという事件は子供たちの心に大きな傷とを残していた。そしてこのアルジェリアの男は、祖国で家族がテロリストたちによって焼き殺されたという痛切な体験を抱えている。この両者はたがいに腫れ物に触るような感じで、おそるおそる距離のとりかたを探っているかのようだ。
突然、身近な存在が奪われてしまった者の絶望と孤独を、丁寧に表現した優れた作品だった。作品のトーンはエキセントリックなところはなく、登場人物たちの悲壮さを、明るい柔らかな光の中で、静かに描き出している。ラザール先生の怯えているような不安げな微笑みの表情が印象に残る。また子供たちの演技演出が素晴らしい。