- 上映時間:123分
- 製作国:アメリカ
- 初公開年月:2016/01/23
- 監督: ロバート・ゼメキス
- 原作: フィリップ・プティ 『マン・オン・ワイヤー』(白揚社刊)
- 脚本: ロバート・ゼメキス、クリストファー・ブラウン
- 撮影: ダリウス・ウォルスキー
- 視覚効果監修: ケヴィン・ベイリー
- 編集: ジェレマイア・オドリスコル
- 音楽: アラン・シルヴェストリ
- 出演: ジョセフ・ゴードン=レヴィット(フィリップ・プティ)、ベン・キングズレー(アニー)、シャルロット・ルボン(ルディ)、ジェームズ・バッジ・デール(ジャン=ピエール)
- 映画館:新宿ピカデリー
- 評価:☆☆☆☆
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綱渡りという曲芸は日本では奈良時代に中国から伝わったという記録があるらしい。西洋では古代からある。ラテン語にもfunambulusという語彙はあるので西洋では古代からあった曲芸だった。綱渡りという曲芸が古今東西の人間を魅了する理由として、友人の一人は「一歩足を踏み外せば転落してしまう綱渡りは人生のすぐれいた比喩になっているからだ」とtwitterでつぶやいていた。確かにそうかも知れない。生と死という劇的な対比を人工的に視覚的に提示することで、綱渡りは人が「生きている」ということを強く感じさせる。
何年か前に『マン・オン・ワイヤー』という綱渡り師、フィリップ・プティを描いたドキュメンタリー映画が話題になった。この映画は気になりつつも私は見に行けなかったのだが、ゼメキスの『ザ・ウォーク』は『マン・オン・ワイヤー』の主人公の挑戦を劇映画化したものだ。フィリップ・プティが地上110階、高さ411mのワールドトレードセンターでの伝説的な綱渡りを成功させる経緯を描いている。
CGによるワールドトレードセンターの綱渡り場面の再現が見物の作品ではあるが、そこに到達する経緯のエピソードの処理が巧く、クライマックスのドラマを盛り上げている。ワールドトレードセンターの命綱なしの綱渡りは非合法の冒険だ。無謀な冒険に理解を示し、手を貸す「共犯者」たちとの出会いの場面、そして綱渡り結構前夜、警備をかいくぐってセンターに忍び込む場面の緊迫感も素晴らしい。チャンスは一回きりだ。厳重な警備をくぐり抜け、綱渡り用の機材を運び込むには、恐ろしく綿密な計画が立てられていたはずである。よくぞ忍び込めたものだと思う。
目玉となる綱渡り場面は圧巻の一言。私は3Dで見たが、下腹部に力が入り、脳血管が充血するような感覚を何度も味わった。私は高所恐怖症ではないと自分が思っていたのだが、目まいのしそうな迫力のある映像に思わず「うぉっ」と何回か思わず声が漏れてしまうことがあった。IMAX3Dだとどれくらい見え方が違うのだろうか。見比べてみたい気がする(恐いけれど)。