閑人手帖

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佐藤二葉『古代ギリシアの響き 竪琴で味わう詩と音楽』2021/07/10(土)@朝日カルチャーセンター新宿教室 

2021/07/10(土)18時〜21時@朝日カルチャーセンター 新宿教室
 
 
 
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2時間のプログラムで、レクチャーが7割で演奏が3割ぐらいだった。ホメーロス『イリアース』から叙事詩、独唱叙情詩、合唱叙情詩、劇詩、祭祀の際の行進曲、そして墓碑といったさまざまなジャンルの古代ギリシャ語のテクストを、ハープ伴奏の歌を交えながら紹介する充実した内容だった。紀元前9世紀から紀元後1世紀に至る古代ギリシア詩1000年の歴史を2時間の枠内で駆け抜ける内容になっていた。
熱烈なギリシア文化崇拝者である佐藤二葉には、彼女が学部学生時代、今から10年ぐらい前に古典戯曲を読む会@東京の参加者として初めて会って以来、その後、実際に会ったのは数回だが、彼女の活動はSNSで追っかけていた。
彼女にはギリシアについて語りたいことがあふれるほどあるはずだ。しかし今日のレクチャー・コンサートではその愛に溺れることなく、2時間の枠内で完結したレクチャー・コンサートとなるよう提示される素材が吟味され、その構成や伝え方も練り上げられていた。レクチャーで語る内容のポイントの押さえ方がうまい。自作の曲と復元された古曲を交えた演奏をどのタイミングで入れるのか、またその曲を提示するのにどのように話の流れを持って行くのかなど。あえて多様なジャンルの作品を紹介し、1000年の古代ギリシア詩と音楽を駆け抜けるという切り口がとてもいい。
レクチャーのパートが割合的に多かったが、動きや表情、声の調子の変化などに俳優ならではの工夫があって退屈を感じない。会場には40名ほどの聴衆(その9割は女性)がいたが、会場全体が彼女の語りのリズムに引き込まれている雰囲気を感じた。
韻文が何よりもテクストの記憶の補助となること、韻文のリズムや音調、そしてメロディーが、口承で伝えられてきた古代ギリシア詩にとって、ある種の「文字性」を持っていたことがレクチャーで強調されていたことが印象に残る。古代ギリシア詩の伝承やパフォーマンスについての仮説は、やはり口頭で伝えられ、写本にはかなり後になって記されることが多かった中世フランスの詩についても当てはまることが多い。
12月に中世フランスのハープを主題としたレクチャー・コンサートを行う準備をしていて、今回佐藤二葉のレクチャー・コンサートを申し込んだのは、自分のレクチャー・コンサートの企画に参考になる点があるのではないかと思ったからだ。自分がこのレクチャー・コンサートで何を伝えたいのか、聴衆はどんな人たちを想定しているのか、その聴衆に自分の伝えたいことをどのように伝えるのが効果的なのか、今一度再検討する必要があると思った。
 
 
 
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レクチャー終了後、古代ギリシャの女性詩人の青春を描いた佐藤二葉のマンガ『歌え!エーリンナ』の単行本にサインをして貰った。
そのあとツーショット写真を一緒に撮って貰ったのだが、あとで見てみるとその写真は撮れていなかった。。。これにはがっかり。