閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

MACONDO

Premier Acte http://www.premieracte.net/
学習院女子大学 感劇市場
http://www.kangeki-ichiba.org/Info/premieracte.html

  • 翻案・演出:Sarkis TCHEUMLEKDJIAN(サルキス・チュームレクドジアーヌ)
  • 原作:Gabriel García Márquez(ガブリエル・ガルシア・マルケス)「エレンディラ」
  • 出演:Aude PELLIZZONI (オード・ペリゾーニ)、Deborah LAMY (デボラ・ラミ)、Catherine VIAL (カトリーヌ・ヴィアル)
  • 美術:Azad GOUJOUNI(アザッド・グジュニ)
  • 音楽:Gilbert GANDIL(ジルベールガンディル)
  • 音響:Bertrand NEYRET(ベルトラン・ネレ)
  • 衣装:Marie-Pierre MOREL LAB(マリー・ピエール・モレル・ラブ)
  • 照明:Guillaume NOEL(ギヨム・ノエル)
  • 上演時間:約1時間
  • 劇場:早稲田 学習院女子大学やわらぎホール
  • 評価:☆☆☆☆

長編小説『百年の孤独』の舞台にもなった海辺にある架空の土地マコンドを舞台とする短編小説三編(「この世で一番美しい水死人」、「巨大な翼を持った老人」、「エレンディラ」)を舞台化したオムニバス作品。この夏に彩の国さいたま芸術劇場蜷川幸雄演出によって上演された坂手洋二脚本『エレンディラ』は、表題作を中心に複数の短編の筋を融合させて長大でダイナミックなスペクタクルを創造していたが、フランスのリヨンを本拠地とする劇団、プルミエ・アクトの公演は役者三人の小規模の編成で刈り込まれた詩的な言葉のやりとりにより《マコンド》の世界を演劇的に提示する繊細な舞台だった。三作品はそれぞれ演じ方に変化をつけている。
最初のテクスト、「この世で一番美しい水死人」では白塗りのピエロのようなメイクをし、ぼろを纏った二人の役者が舞台中央で昔語りのように「マコンド」に漂着した美しい水死体を語りおろす。二番目のテクストでは、「語り芝居」的要素を引き続きつつも、同じ二人の役者が複数の役柄をパントマイム風に村に漂着した老天使の話を演じる。三人目の役者は二人の役者が再現する物語を後ろのほうで見守っている。三番目のテクスト「エレンディラ」では、三人目の役者がエレンディラ役を演じるが彼はパントマイム専門であり、「人間文楽形式」で全体の語りとエレンディラの台詞は、別の役者が担当する。しかしもう一人の役者は台詞も自分で語る。
テクストは原作を短く刈り込んで、ほとんど散文詩のような味わいのものになっている。字幕はその短いテクストのさらに要約といったもの。テクスト自体短いのだから、字幕はもう少し充実させて欲しかった。
中世の旅芸人による語り物文芸のパフォーマンスに立ち会っているような舞台だった。役者もとても達者で、二,三人の少人数ながら舞台空間をしっかりと支配していた。
原作の持つ猥雑でエネルギーにみちた雰囲気に欠けるのが物足りない感じだが、最小限の要素で構成される洗煉された舞台は、観客のイマジネーションに訴えかける仕掛けが豊富な魅力的な舞台だった。