閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

三茶de大道芸

世田谷アートタウン 三茶de大道芸
小6の娘と娘の保育園1歳児クラスからの同級生の男の子二人、その二人のうちの一人の中学生のお姉さん(この子も保育園時代から知っている)といっしょに三軒茶屋に大道芸を見に行った。大人ひとりに、小6三人、中2女子がひとり。大道芸フェスはやはり大人ひとりで行くより、子供と一緒に見たい。昨日の東京は快晴で格好の大道芸日和。親子連れの観客がたくさんいた。
昨年は三茶de大道芸を見に行けなかったので、2年ぶりになる。

午前中に用事があったため、三軒茶屋の駅に着いたのは13時過ぎになってしまった。13時半から始まるユキンコアキラのパフォーマンスが始まるのを待ちながら、路上に座って子供といしょに調理パンの昼食をむしゃむしゃ食べていると、高円寺びっくり大道芸のスタッフとばったり会って、恥ずかった。

ユキンコアキラはこの4月に高円寺びっくり大道芸でボランティアをしたときに、担当した芸人だ。リズムボックスを肩から下げ、激しく踊りながら絵を描くアクション・ペインティングである。紙切り芸の変型とも言える。細い体で、倒れんばかりに動き、時に叫び声をあげて、描き出すその様は感動的であるし、そこで描き出されるのもちょっと表現主義的な雰囲気の具象画で、動きとマッチしている。大体10分で1枚の絵を描き上げ、一回のショーで3枚の絵を描く。「素朴」な喋り、音楽の選択もよく、観客の心のつかみかたをよく研究している。4月に私は高円寺で彼の芸を初めて見た。ただ絵を描くという行為を、パフォーマンスとして成立させている創意にとても感心した。それまで地方を回ることが多かったそうだが、4月の高円寺以降、フランスやイタリアでの海外公演を成功させるほか、日本の大きな大道芸フェスにも連続して出演し、その芸はさらに完成度が高まっていた。ヘロヘロになり消耗しきった姿を、どのように観客に見せ、観客の共感を呼び込むか、その手腕が巧妙になっていた。

次に見たパフォーマンスは、セクシーDavinciのセクシー大道芸。セクシーDavinciは、ここ数年は大道芸フェスティバルの常連になっているが、私は映像でその芸の一部を見たことがあるだけで、彼の大道芸パフォーマンスを通しで見るのは今回が初めてだった。「セクシー大道芸」っていったい何だ?と思っていたのだけれど、まさにセクシー大道芸としか称しようがないような恐ろしく馬鹿馬鹿しい出し物だった。いくつかのちょっとセクシーな踊りと替え歌の合間のかけ声で、観客に「セクシー」と言わせるといった強引な失笑芸で構成された30分。ジャグリングなどの芸も見せるが、芸や踊り自体はすごく地味なのだ。ど派手なデザインの独特の衣装(おしりが半分見える)とオカマ芸の愛嬌と盛り上げだけで成立している。これはある意味、ひじょうにアクロバティックな芸であり、すごいといえばすごい。1000円の投げ銭を渡したら、セクシーブロマイドをくれた。

3つめに見た演目は、カナダのアクロバット男女ペア、Street Circus。劇場と駅のあいだにある半地下の三茶パティオという場所のよさもあって、パフォーマンスの始まる前から大勢の人が待ち受けていた。大道芸のなかではこうしたサーカス的アクロバット芸よりは、私はパントマイム芸のほうを好むのだけれど、このアクロバットのペアは陽性で楽しげな雰囲気がとてもいい。クラシックなスタイルの芸が多かったが、大きな輪を使ったパフォーマンスがダイナミックで新鮮だった。構成がよく練られていて、観客の心のつかみかたは百戦練磨という感じ。左の端っこで見ていた私が、客いじりの対象になりフラフープとナイフを渡す役に指名された。ナイフはかなり大型のもので、手に取るとずっしりと重かった。ミスをすれば大けがしかねない。

最後に見たのはフランスのTheatre Rue Piétonne(「歩行者道路」の意味)のパフォーマンス。細長い蛇腹の巨大な芋虫のようなオブジェ(人が中にはいっている)、それを調教する黒づくめの男の無言劇。芋虫オブジェのくねくねとした動きが面白い。幻想的な味わいの芸術的なパフォーマンスだったが、あの条件の大道芸としてのインパクトは若干弱かったかも。私は楽しんで観たが。

本当はフィナーレの夜会までいたかったのだけれど、連れてきた男の子のひとりが祖父母との食事会のため、6時半までに帰らなくてはならないということで断念。雪竹太郎の人間美術館や加納真実サンキュー手塚などのパントマイムものも見られなかったのも残念だが、再来週に行く静岡の大道芸ワールドカップでこれらの芸については存分に楽しむことにしよう。雪竹さんは見られないかもしれないけれど。

今年の三茶de大道芸は、天候に恵まれ、人が一杯で活気があった。芸人密度も濃くて、とても楽しい午後の時間を過ごすことできた。