閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

松尾スズキ作・演出『マシーン日記』

http://www.geigeki.jp/performance/theater017/

  • 作・演出:松尾スズキ
  • 舞台監督:瀬崎将孝
  • 美術:池田ともゆき
  • 照明:佐藤啓
  • 音響:藤田赤目
  • 映像:上田大樹(&Fiction!)
  • 衣装:戸田京子
  • 出演:鈴木 杏、少路勇介、オクイシュージ、峯村リエ
  • 劇場:池袋 東京芸術劇場 シアターイースト
  • 評価:☆☆☆☆

 大人計画の全盛時代は1990年代だろう。私が小劇場の芝居を見るようになったのは2004年以降なので、その頃には大人計画は人気劇団になっていてチケットを取るのが難しくなっていた。松尾スズキ作・演出の芝居はだからこれまで数本しか見たことがない。 

ここ数年は松尾スズキの露悪性が子供じみたつまらないものに感じられ、すっかり関心を失っていた。『マシーン日記』公演も見に行くつもりはなかったのだが、1月からスタッフとして加わった劇評サイト、ワンダーランドが主催する劇評セミナーの最後の回がこの作品だったので、久しぶりに松尾スズキ作品を見てみることにした。 

面白かった。最初はしばらく物語のなかに入ることができなかったけれど。エキセントリックな4人の男女の異様な共依存の状況を、黒くてナンセンスな笑いのなかで描くエンターテイメント作品だった。シュールで悪意にある笑いのセンスは私好みで、観劇中、よく笑った。4人の人物のへらへらとした不安定な感じがとてもいい。 

作しかし品の娯楽性が高く、観客サービスが豊富であるがゆえの、物足りなさも感じた。彼ら、あるいは彼らのような人物が抱えている地獄の描写が生ぬるい。ああいう状況を描く芝居だったら、もっと徹底した救いのなさ、おぞましさ、狂気を私は見てみたいように私は思う。 

 

当日パンフの松尾の文章で、2001年に『マシーン日記』を上演したとき、片桐はいり阿部サダヲ松尾スズキ、宝生舞のキャストで演じたときに、この作品の完成を見た、と記してあった。今日の4人のキャストはそれぞれ熱演で、各人のぎりぎりまで舞台上でさらけだしていたことは感じ取ったのだけれど、やはり2001年のこの4人のキャストで、2001年にこの作品を見ておきたかったと思った。