閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

シェイクスピアを観る

大場健治(岩波新書,2001年)
ISBN:4004307546
評価:☆☆☆☆

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著者についてはなんの予備知識も持たぬまま読んだが,非常に優れたシェイクスピア入門書だった.『十二夜』『ハムレット』『冬の夜ばなし(冬物語)』『ヘンリー五世』の四作品の紹介を軸に,単なる作品紹介ではなく,舞台や映画でそれらがどのように表現されてきたかを中心に作品の特質を語る.これまで過去の演出家がどんな解釈と演劇観に基づきどのようなアプローチを行ってきたかが簡潔,わかりやすく紹介されている.過去の舞台・映画の解釈への著者の批評的コメントは的確で興味深いものが多い.テクストとしてではなく,舞台作品としてとしてのシェイクスピアを紹介する良書.アカデミズムのキャリアを持ちながらも,権威主義とは無縁の著者の演劇観は僕にはきわめてまっとうで健全なものに思える.