- 製作年度:1984年
- 製作国:アメリカ
- 上映時間:109分
- 監督:トニー・リチャードソン
- 原作:ジョン・アーヴィング
- 脚本:トニー・リチャードソン
- 音楽:レイモンド・レポート
- 出演:ジョディ・フォスター 、ロブ・ロウ 、ポール・マクレーン 、ボー・ブリッジス 、ナスターシャ・キンスキー
- 評価:☆☆☆★
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DVDでの観賞.僕がこの映画を観たのは梅田の二番館で1986年の浪人時代だったように思う.当時の僕の感性に,この映画は強い印象を与え,観賞後のしびれるような感動を今でも覚えている.おそらく僕はこの二番館の上映を二度観に行っているのだ.そのうち一回は友人とである.
そして1991年春にパリでこの映画を上映しているのを見つけて,これは今の妻を半ば強引に誘って観に行った.エキセントリックな兄弟姉妹の一家の悲劇と夢をユーモアの中で描くこの作品は,若かった頃の自分の姿へのノスタルジーと強烈に結び付いている.
今回見返してみると粗が目立つ作品である.日本語訳では文庫本二冊分の濃厚な原作をわずか二時間足らずで追っかけてるのであるから,各エピソードがぶつぎれで並列されている感じになっているし,各エピソードの事件描写も説明不足で唐突な感じがすることが多い.テンポもぎくしゃくしている.「醜い」ことをコンプレックスにして熊のぬいぐるみをかぶっているのがナスターシャ・キンスキーなのも説得力なし.キンスキーが「醜い」と思うわけないだろ,と当時も思っていたのだが.
かつては大受けに受けたギャグも,今ではそれほど笑えない.かつての自分がこうした類いの政治的・性的ギャグによく反応したのはなぜかはよくわかるのだけど.当時何か深遠なメッセージを感じ取ろうとしていた寓意的格言風メッセージも今ではどちらかというと稚拙な表現に思える.この映画を最初に観たときにはアービングの名前さえ知らなかったはずだ.にも関わらずこの作品は当時の僕の琴線に触れた.
今観かえしてみても,オープニングの回想の場面で既に涙.そしてラストの幸福感あふれる大団円の空虚さにやはり涙する.作品の主題自体が実現されない夢と過去へのノスタルジーなのである.浪人時代以降,挫折感を積み重ねてきた僕の人生にもあのような幸福感あふれるラストシーンが訪れるのだろうか.絶望的な気分の中での希望の明るさをこの映画は提示している.それは空虚なものではあるけれど,その空虚さゆえに人の心を優しく包む.浪人時代のまだ若かった僕も絶望的な気分にいたのだろうか.