閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

シェイクスピア作品の翻案としては、舞台以外は原作にきわめて忠実であるといえる『マクベス』翻案の『蜘蛛巣城』のほうがはるかに優れているように思った。『蜘蛛巣城』はテンポがあり、しかも人物の描き方を類型的に乾いた感じで表現することで、作品のエッセンスを明瞭に提示していた。
『乱』は原作の設定をいじった上、原作にない要素を付け加えている。このためドラマの焦点がぼけて、各エピソードの深みが乏しくなってしまった。
見所は色彩感あふれる合戦シーン。赤、青、黒、白などののぼりをかかげた集団が画面を動く様子は、粘度のある色水を流し込むような美しさだ。ワダエミの衣装はすばらしい。時代考証を行ったうえでリアリティを考慮しつつも、実にモダンで自由な感覚を大胆に取り入れる。
原田美枝子、ピーター等熱演ではあったが、道化役のピーターにはやはりどこか違和感を感じたまま。黒澤は役者の演技の演出はあまりうまくないように思う。うまい役者はそろっているものの、どれもちぐはぐとした感じ。