閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

電車男

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  • 場所:新宿 パークタワーホール
  • 評価:☆☆☆★
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書籍、映画に続く僕が観る三バージョン目の『電車男』。ドラマおよび数バージョンあるらしいマンガ版は食していないけれども、かなりどっぷりと「電車男」サイクルに取り込まれてしまった感じ。
中谷美紀の非現実的レベルの美貌に魅せられた映画版の満足度は高かったが、「毒男」たちに焦点をあてた舞台版もいろいろな工夫があるよい出来だった。6500円という値段と「電車男」をめぐる露骨に商業主義的なプロモーションへの反感、そして武田真治主演というところに抵抗感があって、当初は観るつもりはなかったのだけれど、購読している観劇メールマガジンで号外が出るほど絶賛されていたため、ついチケットを衝動買いする。

アフォリズムめいた科白を効果的に配し、六人の個性的な毒男たちが「電車男」の恋愛に感情移入していきつつ自己確認をしていく様子がまさに「劇的」に展開していく優れた演出の舞台だった。脚本もシャープで冗長さがなく、二時間を超える公演時間も長く感じられない。
舞台版は書籍版、映画版、テレビ版ですでに物語を消化してきた人が観客の多くを占めるというハンディがあるが、「電車男」ムーブメントへの自己言及・批評的な視点をとりいれることで、舞台版自体が劇中で相対化されていた。クライマックスとなる報告の場面も緊張感をうまく高めている。知的で密度の濃い舞台であったが、僕自身が物語に慣れてしまったことと武田真治が「オタク」を演じることへの抵抗感(拒否感に近い)をぬぐうことができず、物語のファンタジーに入り込むことができなかった。
さて舞台では、「電車男」伝説のエッセンスとなる部分をうまく取り出し、その部分を濃縮化していたために、「電車男」の物語の虚構性を暴露する結果になったのは若干皮肉な感じもした。
つきあい始めたカップルで見に来るとたのしいのではないかなぁ、と思えるような舞台。
男一人での観劇はむなしさがつのる(「電車男」に限ったことではないが)。