閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

夏の夜の夢

http://www2.odn.ne.jp/shkspr-thr/
シェイクスピア・シアター

ごくシンプルな舞台。大道具のセットは黒い背景と両側の黒いついたてのみ。
台詞は基本的に平板な抑揚の棒読み調。しかしこれは意識的に選択されたもので、翻訳劇を写実的にではなく、シェイクスピア劇を現代の日本で行うにあたって独特の様式感を付与するための手段であることに気づく。役者のコミカルな動きも計算された「型」に基づくものである。こうした「様式」は、長い年月にわたってシェイクスピア劇を継続的に手がけてきた出口典雄氏の到達点を示しているように思った。
極めてシンプルな舞台の上で、こうした「型」に沿って演じられる『夏の夜の夢』は、端正で古典的で静謐な印象を与える。シェイクスピア劇を上演するにあたって、過剰と思われるもの、余分と思われるものを、最大限そぎおとしたような舞台。しかし作品の喜劇性は、演出の洗練にもかかわらず損なわれていない。すっきりとしたあっさり味のシェイクスピア。後味もさくっとして心地よい。最後の劇中劇が多少もたついた感じがあり、安っぽく聞こえる音楽は趣味ではなかったが、満足感の高い舞台だった。
300席ほどの定員だと思われる俳優座劇場の客席の入りは7割ほど。中高年と学生風の二極に分かれた観客層。『夏の夜の夢』の公演は二回のみ。確かに地味ではあるけれども、こんな質の高いシェイクスピア劇の観客が400名ぐらいしかいないというのはさびしい感じがする。

ハーミアとヘレナを演じた二人の女優がどちらもコケットで魅力的な美女だった。

今日の舞台を見て、この劇団によるマリヴォー劇を見てみたいなと思った。