花組芝居の公演を観るのはこれがはじめて.今回は「素ネオ歌舞伎」というかたちでの上演で,照明の変化はつけるが,衣裳は紋付き袴で化粧もなし,舞台美術も天井から垂れ下がる桜の花だけ.声色こそ使い分けるが,男役も女役もみな同じ衣裳なので最初のうちは人物関係がつかみにくい.お話自体も「隅田川」にまつわる能,歌舞伎,伝承からいくつも筋を綯い交ぜにしているため,あらすじをあらかじめ頭に入れておかなければ何が何やらわからなかったかもしれない.
劇の展開はリズムがあって快速.前方に張り出した4メートル四方ほどの狭い空間を中心に15,6人の役者による群れ踊りは変化に富んでいて観客をあきさせない.音楽は洋楽でアコーディオン音楽(フランスもの,アイルランド・トラッド風のもの,タンゴ風のものを織り交ぜて)を中心に使っていた.運動性に富んだ群舞と音楽はよく調和していた.台詞は文語調で,全般にわかりやすさよりも律動的な快感が優先されている.
新入座員の紹介の口上を巧みに劇中に挟み込むやりかたもうまい.再演を重ねている演目だけあり,いかにも手慣れた感じのスマートな舞台だった.
草月ホール三階席からの鑑賞だった.草月ホールに来るのは久しぶり.かなり変則的な作りになっていて三階席は一列のみ,舞台のごく近くの位置から見下ろす感じになる.常に前のめりにならなくては舞台が見えないのが難点.
三階席は空席が目立った.