角田光代(角川文庫、2006年)
評価:☆☆☆★
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こちらは『空中庭園』より素材が軽やかで娯楽性が高い。もてない片思い女の一途ではあるけれど、無様で間抜けな恋の姿を描く。そして彼女の献身的愛は、おそらくその献身性ゆえに報われることはないのだ。『だめんずウォーカー』小説版といった趣きも。しかし恋とはこんな具合にナサケナクてかっこわるくて、バカな姿をさらしつつも、執着せずにはいられないものである。こういう恋のほうがが現実にははるかに多いようにも思う(そうあってほしい)。
もてない男としても、愛されるより愛したい体質はなんとなく分かる。たとえどんなみじめな思いをしていても、誰かを愛している(と思いこんでいる)時にこそ、充実した生のリアリティを感じることができるタイプの人間はけっこう多いのではないだろうか。結局それは自己の恋愛幻想を他者に一方的に投影しているだけのはた迷惑なモノにすぎず、相互的な恋愛ではないにせよ。片思いの時間というのは存外充実しているモノだと、学生時代を振り返って思う。