閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

雨月物語(1953)

http://www.h4.dion.ne.jp/~wsdsck/contents/mizoguchi.html

早稲田松竹で今週は溝口健二特集.前半が『雨月物語』と『近松物語』,後半が『山椒太夫』と「残菊物語』.
戦国時代の乱世の中,生き方に惑いを感じ,分相応の生き方から外れ別の人生を夢見てしまう二人の平凡な男の話.しかしあのような激動の時代の中に生きて,興奮することなく自己の分際を堅持できる人間というのは,例外的であるように思える.
前半は二人の男の惑いの物語の背景となる戦乱の世の有り様を叙事詩としてしっかりと描き出した上で,物語が語られる.結末は思いの外優しく甘いものだった.穏当なモラルの提示にほっとした感じもあったのだけれど.説話的世界がみごとに映像化されている.モノクロのひかりと影の対比が作り出す画面の幻想的な美しさも印象に残る.