閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

ガチ☆ボーイ

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活気に満ちているとはいえない学生プロレス部に,ある日新入部員がやってくる.ハンサムでいつもにこにこして愛想がいいのだが,どこか挙動が変な男だった.ポラロイドカメラを持ち歩き,しょっちゅう写真を撮る.そしてメモ魔.熱心なわりにはプロレスの技と手順の覚えも悪い.
実はこの男は事故で記憶障害をもっており,一回寝てしまうと前日のことはすべて頭から消えてしまうのであった.彼には事故の前の記憶しか残っていない.

ついこの間,記憶障害の男が出てくる芝居を見たところだが,これも症状の出方は違うとはいえ,記憶障害を物語の核として使っている.最近,この「記憶障害」をドラマの仕掛けとして使うことが流行っているようだ.一日ごとに,ひどい場合には数秒毎に記憶がリセットされてしまうという障害は,本人はもとより,何よりも周囲の人間にとって甚だ痛々しい障害に違いない.ドラマの仕掛けとして「記憶障害」は使いたくなる誘惑は何となくわかるのだが,どんなにうまく物語が作られていても障害ものを見ると若干の居心地の悪さは感じる.

悲痛なトーンに落ち込むことなく,爽やかな後味の感動的な作品に仕上がっていた.物語の作りも演出もべたべたに定型的ではあったけれど,ラストの試合の場面への集約のさせ方がとてもうまくできていて,思わず泣かされてしまった.