閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

キサラギ

http://www.kisaragi-movie.com/

一年前に焼身自殺で死んでしまったグラビア・アイドルの一周忌追悼のため、とあるビルの一室にネットの掲示板で知り合った五人のファンがあつまる。五人はこの日が初対面。殺風景なビルの一室でのやりとりの中で、五人と彼女の関係が明らかになっていくにつれて、彼女の死にまつわる様々な事実があきらかになっていく。
グラビアアイドルの謎の死をめぐるミステリー仕立ての対話劇であり、各人の「証言」によって各人の立場が一転する、変化に満ちた展開が喜劇的枠組みのなかで進行していく。その展開の急転の「驚き」の提示の仕方の見事さ、前半でばらまかれていた伏線が後半に気持ちよく回収されていく手際に感心する。一昨年に見た『運命じゃない人』やヨーロッパ企画の芝居に似たパズルを解いていくような快感を味わえる作品である。
しかし僕はこうしたいかにも器用な作品に感心はするけれども、いまひとつのめり込むことができない。仕掛けの回収の手際に重点が置かれるがゆえに、物語が人工的で安っぽくなっているような気がして不満なのだ。
この作品もよくできているなぁと感心しつつ、その手際に寄りかかった物語展開に、若干白けた気分になる。この種の知的遊戯的な仕掛けを、それ自体として楽しむ感性が自分に欠如していることを改めて確認する。
あえてやったのだろうが、安っぽい音楽の使い方、濃厚でしつこさを感じる演技演出も僕の好みではなかった。