前進座
http://www.zenshinza.com/stage_guide/2008kokuritu/2008kokuritu_index.html
- 原作:新田次郎
- 脚色:田島栄
- 演出:十島英明
- 美術:品川洋一
- 照明:寺田義雄
- 音楽:菅野光亮
- 衣装:伊藤静夫
- 出演:中村梅之助、嵐圭史、嵐広也、藤川矢之輔、瀬川菊之丞、今村文美、妻倉和子、小林祥子
- 劇場:三宅坂 国立劇場大劇場
- 上演時間:3時間40分(休憩30分)
- 評価:☆☆☆☆
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江戸時代中期の1707年、富士山噴火による被害に苦しむ民衆から目を逸らすことなく、その救済に自身の存在を賭けた幕府役人の姿を描く。自然災害とおそらく現在の役所よりはるかに理不尽で融通のきかない幕府の官僚組織の不条理に屈せず、大義を貫く愚直な誠実さが心を打つ。この義人は最後には切腹でその生涯を終えることになる。立派な人がいたんだなぁと素直に感動してしまった。
主演を演じた嵐圭史のどっしりとした佇まいが、リアリティある英雄的人物像を作り上げることに成功していた。
舞台美術のあまりの簡素さと音楽の選曲と使用の陳腐さには若干げんなりしてしまう。舞台美術については、場面展開がかなり多い展開だったので簡素になるのはある程度仕方ない面もあるけれど、国立劇場の広い舞台ががらんとした感じで見た目がなんとも寂しい。スピーディーな場面展開は評価できるが、スペクタクルとしてはもう少し工夫がほしかった。音楽はあまりに定型的すぎるがゆえに、かえって芝居の格調を減じていたように僕には思われた。
火山灰によって荒れ果てた村に敢えて残り、村の復興を目指す村人たちには、今の前進座の苦しい状況が重ねられているような気もした。劇の最後で村には復興の希望となるこぶしの花が咲く。前進座もぐっと踏ん張って、新しい花を咲かせてもらいたい。
前進座らしい直球の爽やかで感動的な歴史劇だった。