閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

KT

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1973年の金大中拉致事件の再現ドラマ。この事件に関与した三島由紀夫に共感する自衛官の視点からこの政治事件を抑制された表現で描く。この自衛官はモデルがいたかもしれないが虚構性の強い人物である。佐藤浩市が演じるこの人物のニヒリズムの表現は魅力的だが、そのニヒリズムの説明が「戦後宙ぶらりんにある自衛隊の状況への不満」というのが弱い。屈折し、陰影に富む人物造形、事件のスケールに比すると、こうした人物の形成の動機が貧弱であるように思う。展開のサスペンスの提示の見事さや背景のスケールの大きさ、そして抑制された表現にもかかわらず、いまひとつ物語にリアリティに乏しいのはこの主人公の動機のアンバランスな幼さゆえであるよううに思った。
役者の演技演出はそれぞれの個性を十全に引き出した見ごたえのあるものだった。