閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

吾輩は人間である

劇団カントカークト
http://kantokirkto.com/top.htm

  • 原案・監修・演出:カーク
  • 脚本・演出:山縣有斗
  • 音楽:花澤孝一
  • 出演:カーク、樋口好未、竹澤未来、山縣有斗、櫂シュウ
  • 劇場:大塚 萬劇場
  • 上演時間:2時間
  • 評価:☆☆☆★
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タイトルから想像できるとおり猫が出てくる。
野良猫の世界に人間の世界が対置される。この人間の世界が弱肉強食の野良猫の世界に負けず劣らず過酷だ。不況で会社を首になり、それを家族にだまったまま求職活動を続けるもののうまく行かず、離婚。最愛の一人娘から引き離される。家から追い出されてネットカフェ暮らし、日雇い仕事で知り合った人間にドヤを紹介していもらうが、仕事で怪我をしてドヤからも追い出され、ホームレスとなる。という中年男と転落が描かれる。非常勤講師という非正規雇用者の僕には十分リアリティがある話で、この転落ぶりは見ていて痛々しくてたまらない。
喜劇風のタイトルで、芝居の雰囲気もユーモラスだけれども、内容は社会派プロレタリア演劇であり、ホームレスやホームレスを支援する人たちに対する作り手の共感を感じ取ることのできる爽やかで感動的な芝居だった。
ただ社会問題をあまりに真正面から受け止めたため、その扱いにいまひとつひねりが乏しいことを物足りなくおもった。問題の捉え方や表現の仕方があまりにも定式的で教科書的過ぎるというか。モデルになった人たちを傷つけないようにしよう、という配慮がドラマの類型化に影響を及ぼしているような気がした。