elePHANTMoon
elePHANTMoon
- 脚本・演出:マキタカズオミ
- 舞台美術:袴田長武
- 照明:若林恒美
- 音響:星野大輔
- 出演:江ばら大介 永山智啓 安藤理樹(PLAT-formance) カトウシンスケ 根津茂尚(あひるなんちゃら) 保田泰志 川嵜美栄子(空間ゼリー) 佐藤みゆき(こゆび侍) 重実百合 瀬戸山美咲(ミナモザ) 二階堂瞳子(バナナ学園純情乙女組)
- 劇場:新宿御苑前 サンモールスタジオ
- 評価:☆☆☆☆★
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劇団初見。twitter上で評判がよくて気になっていた舞台だった。見にいってよかった。充実した観劇の醍醐味を味わうことができた。
脚本がとてもよくできている。場末のスナックを舞台にそこに集まるうらぶれた人たちの姿を描くというありふれた設定の芝居なのだが、それぞれの人間が抱えている鬱屈が、微妙な陰翳を伴い台詞からぼんやりと浮かび上がってくる。吹きだまりのような世界で人々が演じている惨めで哀しいお芝居がくすんだ色合いの抒情を醸し出す。見終わったあと胸が締め付けられる思いがした。実に渋い作品だ。
あらゆる人間はあらゆる場所で多かれ少なかれ演技をしているが、飲み屋というのは優れて演劇的な場であることがこの芝居では示されている。私は酒を飲まないため、残念ながらこういった場所とは縁がないが、多くのスナックやキャバクラで毎夜展開されているであろう(おそらく酔っぱらわなくてはできないような)白々しい駆け引きはスリリングな演劇的状況にほかならないように思える。私にはいかにもハードルが高そうな状況ではあるが、切実な欲望を内包するその白々しさのむこうがわにこそ、ある意味、本当の恋愛というものがあるような気もする。うーん、やっぱりお酒が飲めるといいなあ。
スナックのママを演じた瀬戸山美咲がとりわけ魅力的だった。彼女の姿には人生にどこか諦念し、絶望しつつ、それでも希望を求めずにはいられない人間の切なさを感じた。
スナックの人々たちの「希望」を寓意化したような人物の存在が効いていて、作品を単なる貧乏抒情風景のリアリズム劇以上のものにしていた。
この劇団の作品は次回作も見にいくことに決めた。