閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

Monty Python's Spamalot モンティ・パイソンのスパマロット

  • 脚本・歌詞:Eric Idle
  • 音楽:John Du Prez, Eric Idle
  • オリジナル脚本:Graham Chapman, John Cleese, Terry Gilliam, Eric Idle, Terry Jones, Michael Palin
  • フランス語訳、演出:Pierre-François Martin-Laval
  • 出演:Pierre-François Martin-Laval, Gaëlle Pinheiro, Olivier Denizet, Philippe Vieux, Grégoire Bonnet, Arnaud Ducret, Andy Cocq, Laurent Paolini
  • 劇場:Théâtre Comédia http://www.theatrecomedia.fr/
  • 評価:☆☆☆☆★
  • チケット代:29.50 euro (FNAC Spectacle http://www.fnacspectacles.com/ で購入)
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パリ到着の翌日に《モンティ・パイソンのスパマロット》のパリ版を見に行った。2005年にトニー賞を受賞し、ブロードウェーで人気のミュージカルだ。1975年の映画、『モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル』(大傑作!)を土台にミュージカル化した作品だ。パリではこの1月から1000人ほどの規模のコメディア劇場で上演されているが大ヒットというわけではないようだ。パリでミュージカル、それも翻訳ものとなると、わざわざ見るのもどうかなと思ったのだが、割引チケットが出ていたのと、以前マイミクによるNY版のレビューを読んでいかにも面白そうな作品だなと思ったことを覚えていたので、チケットを予約した。到着早々、深刻でとんがった芝居を見たくなかったというのもある。

火曜の夜の公演だったが、客席はがらがらで半分ほどしか埋まっていない。おかげで3階バルコニー席のチケットだったのだが、一階の中央後方の座席で見ることができた。この客の入りだと外れだったかなと思ったのだけれど、芝居自体は猛烈に面白かった。パリ版はニューヨーク版をベースにしながらも細部のギャグに変更を加え、ヒロインである「湖の姫」をNY版よりフィーチャーしているとのこと。また演出家によればNY版より原作である映画に忠実に作ってあると言う。

題材はアーサー王と円卓の騎士の伝説である。イエスの血を受けたという聖杯を探し求める冒険の旅をアーサー王の宮廷の騎士が行うという話。
最初から最後まで、ナンセンスな小ネタのギャグが満載の騒々しい芝居。場面と衣装がめまぐるしく変化する。役者の歌、踊り、芝居のパフォーマンスのレベルが高い。言葉のギャグはわからないところもあったのだが、質の高いファルス的ミュージカルを大いに楽しんだ。ドタバタ・ナンセンスの傑作だ。

半分ほどしか埋まっていなかったが、客席も大受け。最後はスタンディング・オベーションだった。パリの観客はおおむね日本の観客より終演後の拍手を惜しまないし、つまらない公演でも大喝采ということがよくあるのだけれど、この公演の喝采には納得した。こんなに質の高い舞台なのに客入りがこんなに悪いなんて、製作・出演者はさぞかし悔しい思いでいるに違いない。

もともとパリの観客はミュージカルに冷淡だという。そういえばフランス語のミュージカルの舞台を私が見るのはこれが初めてだった。ミュージカルはアングロサクソンの文化だし、NY、ロンドンのほうが圧倒的にレベルが高いだろう、フランスには歌芝居といえばオペラがあるから、わざわざ見に行くことはあるまい、と私自身、思っていたのだ。《スパマロット》、日本でも受ける作品だと思う。日本版の上演予定はないのかな?