- 作・演出 あごうさとし
- ドラマトゥルク 仲正昌樹(金沢大学法学類教授)
- 出演 太田宏(青年団・カムヰヤッセン)・あごうさとし
- 舞台監督 浜村修司
- 美術設計 しまだひであき
- 照明 池辺茜
- 音響 小早川保隆
- 映像 三谷正(Pixel Engine LLC.)
- 特殊メイク・特殊造形 原泰英
- 宣伝美術 竹内幸生
- 制作 井上美葉子(ARTCABINET)
- 主催 あごうさとし
- 助成 セゾン文化財団・芸術文化振興基金
- 協力 アトリエ劇研
- 劇場:森下スタジオ Cスタジオ
- 上演時間:40分
- 評価:☆★
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あごうさとしの作品の舞台はこれが初見だが、youtubeでイヨネスコの『授業』の公演の一部を見たことがあって面白そうな作家だなとは思っていた。今回は青年団の俳優、太田宏が出演するということもあり、見に行くことにした。
開場前にローカーに荷物を預け、工事現場で使うような黄色い腕章と「作業員マニュアル」を手に取るように指示される。マニュアルには「本日の作業内容」と「CREDO」の文言が記されていた。
観客参加型のワークショップのような演劇だった。観客は30人ほど。指示にしたがっていくつかの作業を行う。最初、準備運動としてラジオ体操をやらされた。大半の観客は素直に指示にしたがって、暗い空間でラジオ体操をやった。私もちゃんとやった。西洋人の女性の観客が、ラジオ体操を行わず、後ろのほうで手持ち無沙汰の状態で、日本人観客たちがラジオ体操を行う様子を眺めているのがおかしかった。指示に従っただけだとはいえ、われわれは集団でいきなり変なことをやっている。
しかし面白そうだと思ったのはここまでだった。公演が終わった直後は、作家の意図が理解できなくて消化不良の感じだったが、しばらくたってから考えてみると、この公演は要するにちょっと手の込んだ演劇ワークショップだというのが結論。退屈はしなかったけれど、演劇体験としては弱い。
観客誘導の手順があからさまで白けてしまった。思わせぶりな知的な装飾と素朴過ぎるように思える物語には、私が気づかなかった深いメッセージがあるのかもしれないが、私は乗っかって解釈してみたいとは思わなかった。作品のなかで研究塔を立て、観客にその後の人生を語らせるO氏とは、小保方のことだった。『純粋言語を巡る冒険─バベルの塔I─』という仰々しいタイトルに惑わされていて、上演中は「小保方と重なっているなあ」とぼんやり思っていただけなのだが。そこから振り返ってみると、つまらない作品だという気がする。観客の語らせ方も、その主題も、思わせぶりな演出も。