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中世の戦乱の面影を伝える古城
グラモン城はフランスの南西部のガスコーニュ地方、トゥールーズとボルドーのほぼ中間地点にあります。このあたりは中世の時代から大小の諸侯が相争う戦乱の地であり、この歴史のなかで育まれた勇猛で好戦的な気風は近代にまで受け継がれました。この土地の多くの若者たちが土地の貧しさから故郷を離れ、富と出世の機会を軍隊に求め、兵士として活躍しました。デュマ作『三銃士』は、こうしたガスコーニュの若者たちを主人公に、冒険好きでほら吹きで、空威張りの気味はあるが友情に厚いガスコンかたぎを描いています。
グラモン城の歴史は13世紀初頭にまでさかのぼることができます。当時南フランスのトゥールズ伯領を中心に広がっていたキリスト教の一派、アルビジョワ派(カタリ派)を制圧するための十字軍が組織され、その指揮者だったシモン・ド・モンフォールが戦功によりこの一帯の領主となりました。このシモン・ド・モンフォールが、ユード・ド・モントーという人物にグラモンの領主権を授けたという記録が残っています。
異なる時代様式の混在
14世紀から15世紀にかけての英仏百年戦争の時代には、両国の国境地帯にあったこの地域には《ガスコーニュ様式》と呼ばれる独自の様式の城塞が数多く建築されました。グラモン城もこの戦乱の時代に城塞化されます。中世のガスコーニュ様式の面影は、グラモン城の正面入り口の堂々たるゴシック風の構えや入口に隣接する正方形の塔に確認することができます。北側の建物はルネサンス期のもので、張り出した翼の部分の窓や柱に施された奇抜な装飾や彫刻が印象的な外観を作り出しています。ルネサンス期に建築された建物の螺旋階段を上ると、上階には大広間があります。内装、外装ともに大きな改築と修復がその後も行われ、中世・ルネサンスの古い様式の建築の土台の上に、19世紀後半に流行った中世回顧的なネオ・ゴシックやネオ・ロマネスク、南仏特有のトゥルバドゥール様式など様々な様式の混交が独特の風貌をこの城にもたらしています。
1900年以降はおざなりな所有者が管理を怠ったため、城は荒廃しますが、1961年にディシャン夫妻の所有になり、城は廃墟になるのを免れます。建物の構造を補強する工事が行われたあと、16世紀から18世紀の家具や調度品によって邸宅の内部を飾られ、ルネサンス風の優雅な庭が整備されました。グラモン城は国の歴史的建造物に指定されています。所有者のディシャン夫妻は1979年に国の文化財センターにグラモン城を寄贈しました。
ガスコーニュの田園風景
トゥールーズ地方とコンドン地方の境界をなす渓谷を見下ろす高台に建つグラモン城の周囲は、ガスコーニュ地方の起伏に富んだ牧歌的な田園風景が広がっています。城は人口150人ほどしかいない小さな村のなかにありますが、フランスでもっとも美しい村の一つに登録されているグラモンの村にはフランス全土から多くの観光客が訪れます。村には、民宿も兼ねたレストランと二つの博物館があります。テラス席から城を見ながら食事を楽しむことができる村のレストラン、オベルジュ・ル・プティ・フィヤンで提供される料理は、カスレ、プーレ・ファルシ、カナール・コンフィといった伝統的な定番フランス料理です。
はちみつ博物館は養蜂家の夫妻によって建てられたもので、フランスのみならず世界各国のはちみつ作りの技術と秘密を知ることができます。もちろん地元産を含む様々な品種のはちみつをここで購入することができます。ブドウとワインの博物館では、ブドウの収穫からワインの醸造の過程を詳しく知ることができるでしょう。この博物館のカーブは、500以上のワインのコレクションが展示されています。村にはこのほかに、くるみ油の採集のための水車小屋や伝統的な様式の石造りの田舎家があります。グラモンを訪れる旅行者は、数百年の歴史を持つ古城の周囲の牧歌的景観に田園の恵みと安らぎを感じ取ることができるでしょう。