これはこの夏以降、私がネット配信で見たドラマのなかでも異色であり、かつ出色のものだ。
ケベックの下層社会をたくましく生き抜いている三人の若い女性の友情を描く。今村昌平の映画を連想させるようなハードでヘヴィなコメディだ。
彼女たちの生きる世界は過酷で絶望的だけれど、その世界を三人は下品で快活なバイタリティ、そして歌と友情でもって突破していく。彼女たちをとりまく現実はあまりに悲痛なものだが、彼女たちのエネルギッシュな活躍は痛快だ。
彼女たちは強く、たくましい。でもあの環境のなかで生きていくためには、寄り添い、連帯しなければ生きていけないほど弱い存在でもある。
黒人女性のファビが歌う《J'existe》「私は生きている」という曲の歌詞が心に浸みる。
1話20分だが、どのエピソードも濃厚。
シーズン2ももちろん見る。
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ケベックのドラマ、『キャン・ユー・ヒア・ミー』のシーズン2を見終えた。アダ、ファビ、カロの物語はまだ続くが、残念ながらNetflixではシーズン3はまだ配信されていない。配信されたらもちろん見る。
これはケベックに関心のある人だけでなく、あらゆる人たちに見ることを勧めたい素晴らしいドラマだ。
シーズン2は、シーズン1とはトーンが変わり、アダ、ファビ、カロの三人の女性それぞれが抱える生活の問題が重くのしかかってくる。それは彼女たち個人の問題というよりは、彼女たちのような生活環境に生きる人間一般が抱えるうる問題であり、現代のケベックの社会の問題でもある。そして日本の社会にも同じような問題があるだろう。アダは怒りを時折爆発させ、感情のコントロールができなくなる。アダの怒りがいったい何なのかがだんだんわかってくる。
またこれは社会の貧困層だけの問題ではない。
満ち足りた幸福な人生を送っている人間なんてこの世にはほとんどいない。いいときもあれば悪いときもある。よきにつけあしきにつけ、思いがけない、ちょっとしたきっかけが人生の転機となる。
三人娘は逆境に打ちのめされ、深く傷つく。しかしそれでも彼女たちは果敢にそのくそみたなな人生を生き抜こうとする。その姿は私たちに希望をもたらすものだ。