閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

2022/08/19 劇団カッパ座『ピンクとバルン』@劇場ぷらっと

www.kappa-za.co.jp

 劇団カッパ座は1968年に設立された着ぐるみ人形劇の劇団だ。1983年から89年までNHK教育で放映された『おーい!はに丸』など、教育番組への出演も多い。劇団カッパ座は宗教法人PL教団を母胎とする劇団であり、劇団本拠地の劇場ぷらっとはPL教団の聖地の敷地内にある。教団のシンボルともいえる大平和祈念塔が劇場のすぐそばそびえ立っている。

 宗教法人が母胎の劇団ではあるが上演作品には宗教色はほぼ皆無だ。作品の前説で、劇団カッパ座のスローガン(?)ともいえる「三つの合い言葉」が確認され、それを歌うという定式的やりとりがあるが、それは「やくそくまもろう」、「なかよくしよう」、「あいさつしよう」というごくありふれた市民道徳であり、宗教的なものではない。

 等身大着ぐるみ人形劇専門の劇団はおそらくカッパ座だけだろう。着ぐるみの目と口は動くようになっていて、これはカッパ座の着ぐるみ独自の機構のようだ。2020年2月までは全国各地で巡回公演を行っていたが、2020年2月以降「弊社劇場をフル活動し地元に根差す劇団を目指して奮闘中」とのこと。新型コロナが日本で広がった時期に一致するが、この時期にはすでに全国巡業というスタイルを維持することは難しくなっていたのかもしれない。ちなみに2020年12月にはPL教団三代目教祖の御木貴日止が急死し、その後、後継者はまだ決まっていないようだ。清原、桑田、立浪などを輩出した高校野球の名門、PL学園野球部は2016年に廃部になっている。母胎となるPL教団の弱体化が進んでいるので、劇団カッパ座の運営も相当苦しいものになっているはずだ。新型コロナ禍はさらに追い打ちをかけるものとなったに違いない。

 『ピンクとバルン』は8月と9月に13回の公演が予定されている。上演時間は前説、後説も含め60分ほどだった。私が見たのは8月19日の13時半開演の回で、観客は12人、このうち子供が4人だった。

 入場料は前売りが1500円、当日が2000円で、三歳児以上が有料となる。子供料金は設定されていない。上演中の写真撮影および録画は自由に行ってよいとのこと。公演終了後には舞台で、等身大着ぐるみ人形と写真を撮影することができる。

 作品のメイン・ターゲットは三歳児から小学校低学年くらいだと思う。等身大ぬいぐるみの造形や動きは愛嬌たっぷりで可愛らしく、物語の展開もわかりやすい。最初にカッパ座のメイン・キャラクターのカッパとオオカミと豚の等身大着ぐるみによる前説があり、本編は電気屋のせつさん、ロボットのピンクとバルン(『スターウォーズ』のC-3POとR2-D2のイメージをかぶせている)、山の持ち主、猫と猫の飼い主の犬の6名により展開する。

 内容は、とある山のなかに持ち込まれた粗大ゴミの山から、せつさんが部品を取り出してロボット、ピンクを組み立てる。ピンクは今度は残った粗大ゴミからもう一台のロボット、バルンを組み立てる。以後、せつさんがこの山中に立ち寄るたびに、二台のロボットが粗大ゴミから色々なものを再生していき、最後にはゴミはなくなっていた、というリサイクル推奨演劇である。「もったいない、もったいない」というモラル(教訓)が劇中で繰り返される。

 NHKの幼児向け番組で放映されていそうな健全で可愛らしい教育劇だった。たわいない内容だが、等身大着ぐるみ俳優の演技は、きっちり決まっていて完成度が高い。着ぐるみ俳優が話すのではなく、PAからの音声に合わせて俳優が動いていた。ロボットや動物だけでなく、人間役も等身大着ぐるみ人形だったのにはぎょっとした。頭でっかちの人形造形や仕草がユーモラスで面白かったが。子供が主人公ではなく、大人のおっさんとロボット、動物たちのやりとりの芝居となっていたのは、子供向きの演劇としては少々異色に思えた。

 12人の観客のうち、この演目の観客としては場違いな大人はわれわれ二人を含めて3名。他は家族連れが三組だったが、いずれも常連客のような雰囲気だった。4人の子供たちは幼児と小学校低学年だったが、芝居の内容によく反応していて、楽しんで見ている様子がうかがえた。ほんわかした親密な雰囲気の公演ではあったが、やはりガラガラの客席で見る芝居はやはりわびしい気分になる。たくさんの子供たちの前で上演したい劇場スタッフの心情を思うと心が痛む。

 公演終了後は舞台で等身大人形との撮影タイム。希望者全員が無料で写真撮影可能ということで、私も撮って貰った。

 前売り券を購入した観客には、終演後にミニ縁日で、ヨーヨー釣り、スーパーボールすくいとしゃてきで遊ぶことができる無料券が配られていた。ただおそらく舞台出演者が、カフェテラスとミニ縁日のスタッフを兼ねているため、舞台終演後、しばらく待つ必要があった。私は同行者にも無料券をもらい、スーパーボールすくいを二度やったが、これが案外難しく、一個もスーパーボールを取ることができなかった。失敗しても一個ぐらいくれるのかと思えば、くれなかった。カッパ座の人形をデザインした陶芸家が作った土鈴がお土産で売っていたので二個購入する。

 公演終了後は、高さ180メートルの白亜の塔、平和祈念塔へ。かつては上層階まで上ることができたそうだが、今は二階までしか上ることができない。正式名称は超宗派万国戦争犠牲者慰霊 大平和祈念塔とのこと。

 間近から見上げるとその威容は圧巻である。その造形はシュールレアリスムの絵画のなかに描かれたオブジェあるいはガウディの彫刻を思わせる。この塔には信者でなくても入ることができる。受付で宗教宗派に関わらず戦没者を慰霊するための塔だという説明を受け、塔のなかで教団の教師のかたに導かれて二階の神殿に参拝する。

 PL教団の前身である教団は大正期に生まれた新宗教の一つだが、天理教、大本教のような教派神道ではなく、既存の宗教に依らない独自の教義を持つ宗教であることをWikipediaの記述で知った。神殿に祀られているのはおそらく「“大元霊(みおやおおかみ)”」であるが、これは教団ウェブページによると「自然法則を司る万象の根源」となるものらしい。教理などを解説する書物の類いが教団本部で売られている様子がないのが以外だった。ちなみに信者の義務は会費を納めることであり、月会費は一般が1000円、学生は300円とのこと。

 かつては公称260万人以上の信者をPL教団は有していたが、今では公称90万人、実際に活動している信者は数万人ではないかと言われている。

PL教団 野球部廃部、信者の実数は数万人程度に減少か|NEWSポストセブン

 PL教団のなかでの劇団カッパ座の現在の位置付けはどのようなものなのだろうか? また教団の拡大期には劇団カッパ座にはどのような役割が期待されていたのだろうか? 演劇は信者共同体の結束の強化や布教の面で非常に有効な手段だと思うのだが、案外、近・現代の宗教では演劇は活用されていないように思えるし、宗教と演劇の関係についての研究も多くない。