五反田団 第35回公演
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- 作・演出:前田司郎
- 照明:山口久隆
- 出演:前田司郎,内田慈,石橋亜希子,安倍健太郎,中川幸子
- 劇場:こまばアゴラ劇場
- 上演時間:1時間40分
- 満足度:☆☆☆☆
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スーパー勤務の女に寄生し,日々睡眠とファミコンのみにあけくれる駄目男の生態を描く風俗喜劇.布団が敷きっぱなしの荒れ果てた部屋での退廃と倦怠の日常がしめされている.女はこの状況に我慢できない.スーパーの上司の妻子持ち男との不倫は,女の不完全燃焼の脱出願望の歪みとむすびついたものだ.
女はときおり逆上するが,ある種の頑な哲学に基づくふるまいであるかのように男はのらりくらりとかわしてヒモの生活を続ける.
三年前,男の妹が死んだ.妹が過去に男のアパートに突然やってきたとき,4年前の回想が「現在」の物語に挿入され,重ねられていく.男のぐうたら生活は4年前にはすでに彼のスタイルとして定着していたが,それが人生という緩慢な死に向き合うための一つの生き方として意識的に選択されたのは妹の死が直接のきっかけなのだろう.
脱力感に満ちた演出は完成されていて,観客の反応はとてもいい.僕もよく笑った.
お話の素材とその扱い方には若干の陳腐さを感じる.観客の反応仕方や芝居の作り方に予定調和が漂いはじめたような感じもあり.観客の反応の「壺」をうまく抑えたある種のウェルメイドプレイの趣もある.前田司郎演じる駄目男の言動が面白すぎる.アフタートークで前田司郎は今日の自分の演技はあまりうまくいかなかった,と言っていたけれど,予定調和的な客受けの小路の中に入り込みたくないというよう気持ちもあるのだろうか.狙って笑わせてしてやったり,と思う部分を微妙にずらして,意外性を導入したいというのが前田演出の目指しているところであるような気がする.
西村賢太のような壮絶なダメ男私小説を知ってしまうと,この芝居の駄目男はかなり生ぬるく定型的に感じられる.ダメぶりのリアリティーは,青年団の安倍健太郎のほうがよく出ていたようにおもった.