http://www.nntt.jac.go.jp/season/updata/20000041_play.html
- 作:蓬莱竜太
- 演出:栗山民也
- 美術:松井るみ
- 照明:服部基
- 音響:秦大介
- 衣装:宇野善子
- 出演:秋山奈津子、魏涼子、前田亜季、黒沢ともよ、三田和代
- 上演時間:1時間45分
- 劇場:初台 新国立劇場 小劇場
- 評価:☆☆☆★
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「まほろば」とは、『万葉集』や『古事記』などに出てくることばで、「周囲を山々で囲まれた、実り豊かな土地で美しい住み良いところ」を意味することばだそうだ。
三世代にわたる六人の女たちだけが登場する芝居。田舎の旧家を舞台に、長女と孫娘の妊娠騒動を軸に、女たちにとって「こどもを持つこと」の意味が、喜劇的な枠組みのなかでゆるやかに問いかけられる。
封建的で因習的な母親の言動がカリカチュアされているが、芝居の中で提示される「こども」観は保守的で穏健なもの。そこに蓬莱竜太という男性作家の「女性観」「子供観」のステレオタイプを見出し、不快に思う女性もいるのではないだろうか。ただ「子供を生む人生を選ぶのか」「生まない人生を選ぶのか」といった選択は、男性よりはるかに当事者性が強い(子供を持つことのできるリミットがはっきりしているがゆえに)女性にとってはかえって扱いにくい問題であるようにも思える。とりわけ「生まない」選択をした女性については、本人にとっても、他者にとっても、生まない女性が増えてきた現代日本でも、その選択の説明を強いられる。何らかの理由を設定せずに、「生まない」のはやはり難しいように思える。
おばあちゃんのキャラクターが善人の定型にはまりすぎているのが気に入らなかったのだけれど、展開を動かすキーとなるなぞの提示の仕方、笑いの小道具的な仕掛けのうまさに洗練を感じた。
こまっしゃくれたませたがきを演じる子役、黒沢ともよの演技の達者ぶりも印象に残る。
新国立の同時代シリーズ3作のうち、前田司郎作-白井晃演出の作品以外の二本を見た。二本ともよい作品で楽しんでみることができたのだが、作品はどちらも堅実、保守的で、斬新なエネルギーよりも熟達し完成された才能を感じさせるものだった。若い作家による新しい演劇世界の開拓を示すものでなかったのに物足りなさも感じる。