閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

春の劇(1963)

 

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「16世紀に書かれたテキストに基づいて山村クラリェで上演されるキリスト受難劇の記録」と紹介にあるが厳密な意味でのドキュメンタリーではないはずだ。演じている俳優はおそらく村の人々だと思われるし、上演台本もその村に伝わっているものではあるが、映画撮影用に再現された上映だと思われる。「春の劇」というタイトルからおそらくこの村では復活祭の時期にこのキリスト受難の劇を上演する習慣があったのだろう(今でも続いているかどうかは不明)。

上演場所は村内の数カ所で、夜と昼の両方をまたいでいる。台詞は、百人一首の読み上げを連想させるような独特の調子で読み上げられるが、その朗唱は単調きわまりなく、上映中は睡魔との戦いとなった。最後のイエス受難の場面に重なって、二十世紀の戦争の被害を映し出した実映像がいくつか映し出される。この重ね方は作為がみえすぎ、安易かつありきたりだ。

見始めてからこの作品をかつて見ていたことを思いだした。実に興味深い題材の作品であったが、退屈極まりない作品でもあった。

ザ・ウォーク(2015)THE WALK

 

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綱渡りという曲芸は日本では奈良時代に中国から伝わったという記録があるらしい。西洋では古代からある。ラテン語にもfunambulusという語彙はあるので西洋では古代からあった曲芸だった。綱渡りという曲芸が古今東西の人間を魅了する理由として、友人の一人は「一歩足を踏み外せば転落してしまう綱渡りは人生のすぐれいた比喩になっているからだ」とtwitterでつぶやいていた。確かにそうかも知れない。生と死という劇的な対比を人工的に視覚的に提示することで、綱渡りは人が「生きている」ということを強く感じさせる。

何年か前に『マン・オン・ワイヤー』という綱渡り師、フィリップ・プティを描いたドキュメンタリー映画が話題になった。この映画は気になりつつも私は見に行けなかったのだが、ゼメキスの『ザ・ウォーク』は『マン・オン・ワイヤー』の主人公の挑戦を劇映画化したものだ。フィリップ・プティが地上110階、高さ411mのワールドトレードセンターでの伝説的な綱渡りを成功させる経緯を描いている。

CGによるワールドトレードセンターの綱渡り場面の再現が見物の作品ではあるが、そこに到達する経緯のエピソードの処理が巧く、クライマックスのドラマを盛り上げている。ワールドトレードセンターの命綱なしの綱渡りは非合法の冒険だ。無謀な冒険に理解を示し、手を貸す「共犯者」たちとの出会いの場面、そして綱渡り結構前夜、警備をかいくぐってセンターに忍び込む場面の緊迫感も素晴らしい。チャンスは一回きりだ。厳重な警備をくぐり抜け、綱渡り用の機材を運び込むには、恐ろしく綿密な計画が立てられていたはずである。よくぞ忍び込めたものだと思う。

目玉となる綱渡り場面は圧巻の一言。私は3Dで見たが、下腹部に力が入り、脳血管が充血するような感覚を何度も味わった。私は高所恐怖症ではないと自分が思っていたのだが、目まいのしそうな迫力のある映像に思わず「うぉっ」と何回か思わず声が漏れてしまうことがあった。IMAX3Dだとどれくらい見え方が違うのだろうか。見比べてみたい気がする(恐いけれど)。

2015年の演劇生活

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2016年、あけましておめでとうございます。

このブログはもともと観劇記録のためのもので、私が見た全作品について一言でも感想を記したいと思っているのですが、昨年は元「ワンダーランド」のスタッフの有志とスタートさせた観客発信メディア WLに劇評を掲載したり、Facebookのノートに感想を記したりすることが多く、こちらのブログの更新が滞っていました。

一つの場所で自分の観劇記録を一覧出来ることはやはりとても便利なのでおいおい時間を見つけて方々に書いた劇評の類をこちらに集約させていきたいと考えていますが、とりあえず昨年、2015年に見た演劇作品についてこの記事でまとめて書いておきたいと思います。

2015年には下のリストにあるように私は約100本の作品を見ました。複数回行った公演があったり、複数の演目が上演される公演もありましたので約100本となります。私の満足度という観点から評価すると最高点の☆☆☆☆☆をつけた演目は12本となります。この12本にはいずれも大きな感銘を受けましたが、自分にとってのインパクトの強さから敢えて順位をつけると以下のようになります。

1. 古代演劇クラブ『EPITREPONTES Act 2 & 3』
2. SPAC『室内』
3. 三条会『熱帯樹』
4. 庭劇団ぺ二ノ『地獄谷温泉 無明ノ宿』
5. ムシカ・ポエティカ『<操り人形と歌の夕べ>〜「ユトロ」とともに〜』
6. 佐東利穂子、勅使川原三郎ペレアスとメリザンドⅡ』
7. ←ココカラ『語りえぬもの Not Talking』
8. 木ノ下歌舞伎『黒塚』
9. 青年団+第12言語演劇スタジオ『新・冒険王』
10.青年団『走りながら眠れ』
次点:木ノ下歌舞伎『心中天の網島』
番外:ギリヤーク尼ヶ崎「大道芸」@川越

 

1. 古代演劇クラブ『EPITREPONTES Act 2 & 3』は、メナンドロスの喜劇を古代ギリシャ語で上演するという画期的な試みでした。古代ギリシャ悲劇の上演は度々ありますし、喜劇についてもアリストファネスの演目ならたまに上演されることがあります。しかし完全なテキストが残っていないメナンドロスの作品は極めて稀ですし(おそらく海外でもほとんどないと思います)、しかも古代ギリシャ語の上演となるとなおさらです。観客もそしておそらく演じる俳優も、古代ギリシャ語を理解できる人はほとんどいなかったはずです。しかしこの実験的で挑発的で、そして学術的でもある公演が、演劇公演として実に興味深いものになっていました。訳者・演出家の古代ギリシャと演劇への深い敬愛を感じとることのできる公演でした。この公演については劇評を残すことができていないこと、そしてその後二回行われた古代演劇クラブの公演を見ることができなかったことを私はとても遺憾に思ってます。

2. SPAC『室内』は、二年前の楕円堂での初演、そして昨年のアヴィニョン演劇祭と公演を追いかけてきました。この作品によって私はメーテルランクの深淵で静謐な世界の魅力を知ることができました。作品誕生の地である楕円堂にこの作品が回帰し、その最後の公演に立ち会えたことをとても幸せに思っています。

 3. 三条会『熱帯樹』は、実に異様な舞台でした。演出の関は、三島の戯曲を徹底的に読み込んだ上で、極めて独創的な表現を付与しています。過剰でグロテスクな修辞虚構となった『熱帯樹』の人物たちはさらにデフォルメされ、その異形性が強化されていました。

4. 庭劇団ぺ二ノ『地獄谷温泉 無明ノ宿』ペニノの世界は、少年期の無邪気な悪意、性欲、好奇心、エゴイズムを、特殊な環境で培養し、発酵させたかのような趣きがあります。少年期、思春期の性的ファンタジーの特殊な発展が、グロテスクで滑稽な驚異を作り出していました。

5. ムシカ・ポエティカ『<操り人形と歌の夕べ>〜「ユトロ」とともに〜』は、声楽、器楽、人形、朗読という異なる表現手段の融合が、奇跡のような美しい舞台を作り出してました。ミニマルな構成によるささやかな舞台でしたが、異なる属性の表現が互いに呼応しあい鉱物の結晶を思わせる強固な時空が出現していました。

6. 佐東利穂子、勅使川原三郎ペレアスとメリザンドⅡ』。佐東利穂子は確かにメーテルランクとドビュッシーによるこのオペラの核心となる部分を丁寧に読み取った上で、それをダンスという非言語的手段によって変換することで、作品の本質的で深遠な領域に到達しているように感じました。彼女の表現は極めて詩的で文学的でした。

7. ←ココカラ『語りえぬもの Not Talking』は、4人の俳優によるリーディング公演でした。リーディング公演は、波長が合い、その語りのなかに引き込まれたときには、通常の演劇公演以上に深い感興を味わうことができるような気がしますが、今回のマイク・バーレット作『語りえぬもの』の公演はまさにこういう公演でした。演劇公演は一つの空間と時間を共有者たちのあいだで相互に行われる「翻訳」作業の集積の上に成立していることを感じさせる親密な雰囲気の公演でした。

8. 木ノ下歌舞伎『黒塚』。昨年は私にとって木ノ下歌舞伎デビューの年となりました。杉原邦生演出の『黒塚』、『三人吉三』を3月と6月に見て、9月にFUKAIPRODUCE羽衣の糸井幸之介演出の『心中天の網島』を見ました。いずれも異なる雰囲気の演出でしたが、歌舞伎台本の新しい可能性を拓く現代演劇としてとても面白く見ました。三本とも素晴らしい作品でしたが、その中でも最も印象深かったのは3月に見た『黒塚』でした。

9. 青年団+第12言語演劇スタジオ『新・冒険王』。青年団の芝居のクオリティは安定しています。旧作の『冒険王』も傑作ですが、同じ場所設定を利用した日韓の新作、『新・冒険王』に私はより大きな感銘を受けました。祖国に居場所を見失い、国を離れて生きる人たちの寄る辺なさが心にしみ、結末に示された祈りと希望に深く共感しました。日本と韓国、こんな距離感で恐る恐るつき合っていければいいと思います。

10.青年団『走りながら眠れ』を見るのは私は二回目でしたが、私は平田オリザ作品のなかでも最も好きな作品の一つです。時代と社会の圧力を一身に引き受け、異端としての生きざまを全うした二人のアナキストの精神の強靱さに心打たれました。平穏と緊張という矛盾する空気を見事に演じた古屋隆太と能島瑞穂の演技は、前に見たときよりもさらに深化しているように感じました。

番外のギリヤーク尼ヶ崎「大道芸」@川越、高齢と体調不良のため実施が危ぶまれていたパフォーマンスです。手の震えはさらにひどくなり、最初のほうはかなり調子が悪そうだったのですが、踊っているうちに元気を取り戻したようで、走り回り、水を被る「念仏じょんがら」も見事に踊りきりました。終演後には演者も観客も泣いていました。

この十二作以外にも言及したい素晴らしい舞台はたくさんありました。がらがらの金沢おぐら座で娘とみた南條光貴劇団は忘れがたい公演でしたし、3月のアトリエ春風舎でのRoMT『十二夜』は様々な演出上の工夫で幅広い観客から支持されました。6月のままごとの『わが星』再再演は、2011年4月と同じく娘と一緒に見に行き、やはり印象深い公演になりました。5月にアゴラで上演されたSMショーの再現、elePHANTMoon
『爛れ、至る。』も強烈な舞台でした。てがみ座『地を渡る舟』、鳥公園『緑子の部屋』も劇評で取り上げてみたかった優れた公演でした。

 

日付

カンパニー・出演者

作者

演出

公演名

劇場

評価

備考

2015/01/02

革命アイドル暴走ちゃん

二階堂瞳子

二階堂瞳子

うぇるかむ★2015〜革命の夜明け〜

絵空箱

☆☆☆★

 

2015/01/04

南條光貴劇団

 

 

 

おぐら座

☆☆☆☆★

 

2015/01/07

一見劇団

 

 

 

篠原演芸場

☆☆☆☆

 

2015/01/11

たつみ演劇BOX

 

 

 

浅草木馬館

☆☆☆☆★

 

2015/01/18

SPAC

 

宮城聰

グスコーブドリの伝記

静岡芸術劇場

☆☆☆☆

 

2015/01/22

水素74%

田川啓介

田川啓介

こわれゆく部屋

アトリエ春風舎

 

 

2015/01/23

←ココカラ

ブライアン・フリール

江尻裕彦

それからの二人

グリーンエイミーカフェ

☆☆☆☆★

 

2015/01/30

フライハイトプロジェクト

市川奈々

大舘実佐子

おしえてよ、ねぇ

ザムザ阿佐ヶ谷

 

2015/02/07

ホエイ

山田百次

山田百次

雲の脂

アトリエ春風舎

☆☆☆☆

 

2015/02/20

Ezéquiel Garcia-Romeu

Shakespeare

Ezéquiel Garcia-Romeu

Banquette Shakespeare

TNN

☆☆☆★

 

2015/02/22

Bustric

Shakespeare

Bustric

Shakespeare e le nubole

TNN

☆☆☆

 

2015/03/07

SPAC

Shakespeare

宮城聰

ハムレット

静岡芸術劇場

☆☆☆☆

 

2015/03/11

木ノ下歌舞伎

木ノ下裕一

杉原邦生

黒塚

こまばアゴラ劇場

☆☆☆☆☆

2015/03/19にも鑑賞。

2015/03/12

桃園会

清水友陽

深津篤史

paradise lost, lost

座・高円寺

☆☆☆★

 

2015/03/13

カトリ企画

渡邊一功、岸田國士

山本タカ

ある夫婦

古民家asagoro

☆☆☆☆

紙風船」から90年。岸田國士の今

2015/03/13

iaku

横山拓也

上田一軒

あたしら葉桜

古民家asagoro

☆☆☆☆

紙風船」から90年。岸田國士の今

2015/03/13

桃園会

空ノ驛舎

深津篤史

うちやまつり

座・高円寺

☆☆☆☆

 

2015/03/14

石神井東中学校演劇部

竹生東、室達志

田代卓

上を向いて歩こう2013

練馬区富士見台地区区民館

☆☆☆★

 

2015/03/16

RoMT

Shakespeare

田野邦彦

十二夜

アトリエ春風舎

☆☆☆☆★

3/27にも鑑賞。

2015/03/18

中村橋之助中村錦之助

河竹黙阿弥

 

梅雨小袖昔八丈―髪結新三―/三人形

国立劇場

☆☆☆★

 

2015/03/19

モズ企画

 

 

韓国新人劇作家シリーズ第三弾

タイニイアリス

☆☆

2作品 『童話憧憬』 / 『とんでもない同居』 / アフタートーク: 童話憧憬について

2015/03/21

OM-2

 

真壁茂夫

作品No.9

日暮里サニーホール

☆☆☆★

 

2015/03/25

古代演劇クラブ

メナンドロス

岡本卓郎

EPITREPONTES Act 2 & 3

東松原ブローダーハウス

☆☆☆☆☆

 

2015/03/26

関東中学校演劇

 

 

第4回関東中学校演劇発表会・2015関東中学校演劇コンクール 第2日目

神奈川県立少年センター

 

6演目を鑑賞。

2015/03/27

ENBUゼミ卒業公演

 

糸井幸之介

ABCEFGH

シアター風姿花伝

☆☆☆☆

 

2015/04/04

キムラ企画

木村謙太

木村謙太

あっち無為て本意

アトリエ春風舎

☆☆☆★

 

2015/04/10

新国立劇場

ラティガン

鈴木裕美

ウィンズロウ・ボーイ

新国立劇場小劇場

☆☆☆

 

2015/04/12

シアター・ノーチラス

今村幸市

今村幸市

スカイ

シアター711

☆☆☆

 

2015/04/12

映画美学校アクターズ・コース

松田正隆

松井周

石のような水

アトリエ春風舎

☆☆☆☆

 

2015/04/22

玉田企画

玉田真也

玉田真也

ふつうのひとびと

アトリエ春風舎

☆☆☆★

 

2015/04/25

SPAC

トム・ラノワ

宮城聰

メフィストと呼ばれた男

静岡芸術劇場

☆☆☆☆

 

2015/04/25

鳥の劇場

デュレンマット

中島諒人

天使バビロンに来たる

楕円堂

☆☆☆

 

2015/04/29

一見劇団

 

 

 

浅草木馬館

☆☆☆★

 

2015/05/01

ムシカ・ポエティカ

岡本かの子

淡野弓子

<操り人形と歌の夕べ>〜「ユトロ」とともに〜

三鷹市芸術文化センター 星のホール

☆☆☆☆☆

 

2015/05/03

SPAC

唐十郎

宮城聰

ふたりの女

野外劇場 有度

☆☆☆☆

 

2015/05/04

イサーム・ブーハーレド、ファーディー・アビーサムラー

イサーム・ブーハーレド、ファーディー・アビーサムラー

イサーム・ブーハーレド、ファーディー・アビーサムラー

ベイルートでゴドーを待ちながら

BOXシアター

☆☆☆★

 

2015/05/04

演戯団コリペ

太田省吾

李潤澤

小町風伝

楕円堂

☆☆☆☆

 

2015/05/04

SPAC

メーテルランク

ダニエル・ジャンヌトー

盲点たち

BOXシアター

☆☆☆

 

2015/05/05

SPAC

大東翼[㈱大と小とレフ]、鈴木一郎太[㈱大と小とレフ]、西尾佳織[鳥公園]

大東翼[㈱大と小とレフ]、鈴木一郎太[㈱大と小とレフ]、西尾佳織[鳥公園]

例えば朝9時には誰がルーム51の角を曲がってくるかを知っていたとする

静岡市池田地区周辺

☆☆☆☆

 

2015/05/05

ポワン・ゼロ

ホドロフスキー

ジャン=ミシェル・ドープ

聖★腹話術学園

静岡芸術劇場

☆☆☆★

 

2015/05/10

前進座

 

 

番町皿屋敷文七元結

国立劇場

☆☆☆☆★

 

2015/05/15

ももいろクローバーZ

平田オリザ

本広克行

幕が上がる

Zeppルーシアター六本木

☆☆☆★

 

2015/05/17

SPAC

久保田梓美

宮城聰

マハーバーラタ〜ナラ王の冒険

駿府公園特設舞台

☆☆☆☆

 

2015/05/25

ままごと

柴幸男

柴幸男

わが星

三鷹市芸術文化センター 星のホール

☆☆☆☆★

6/10にも観賞。

2015/05/27

elePHANTMoon

マキタカズオミ

マキタカズオミ

爛れ、至る。

こまばアゴラ劇場

☆☆☆☆★

 

2015/05/29

快快

多田淳之介

岩井秀人

再生

KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ

☆☆☆☆

 

2015/06/17

青年団+第12言語演劇スタジオ

平田オリザ、ソン・ギウン

平田オリザ、ソン・ギウン

新・冒険王

吉祥寺シアター

☆☆☆☆☆

 

2015/06/19

劇団あおきりみかん

鹿目由紀

鹿目由紀

だるい女

こまばアゴラ劇場

☆☆☆★

 

2015/06/21

木ノ下歌舞伎

河竹黙阿弥/木ノ下裕一

杉原邦生

三人吉三

東京芸術劇場 シアターウエスト

☆☆☆☆★

 

2015/06/23

石神井東中学演劇部

 

 

 

石神井東中学校

☆☆☆★

 

2015/06/25

青年団

平田オリザ

平田オリザ

冒険王

吉祥寺シアター

☆☆☆☆★

 

2015/06/26

←ココカラ

グリーンバーグ

江尻裕彦

作者の声

グリーンエイミーカフェ

☆☆☆★

 

2015/06/28

宝塚月組

Dove Attia、Albert Cohen

小池修一郎

1789 -バスティーユの恋人たち-

東京宝塚劇場

☆☆☆☆

 

2015/07/01

マームとジプシー

藤田貴大

藤田貴大

cocoon

東京芸術劇場 シアターイース

☆☆☆☆★

 

2015/07/03

吉野翼企画

岸田理生

吉野翼

恋 其之弐

こまばアゴラ劇場

☆★

 

2015/07/08

Q

市原佐都子

市原佐都子

玉子物語

こまばアゴラ劇場

☆☆☆★

 

2015/07/12

SPAC

泉鏡花

宮城聰

夜叉ヶ池

韮山時代劇場大ホール

☆☆☆☆

 

2015/07/17

ArCairo

長谷川寧、いいむろなおき

長谷川寧、いいむろなおき

Phantom Form, Invisible Move

こまばアゴラ劇場

☆☆★

 

2015/08/20

庭劇団ぺ二ノ

タニノクロウ

タニノクロウ

地獄谷温泉 無明ノ宿

森下スタジオ・Cスタジオ

☆☆☆☆☆

 

2015/08/21

劇団HIT!STAGE × 14+

森馨

中嶋さと

血の家

こまばアゴラ劇場

☆☆☆★

 

2015/08/27

下鴨車窓

田辺剛

田辺剛

漂着(island)

こまばアゴラ劇場

☆☆☆☆

 

2015/08/24

KUNIO

柴幸男

杉原邦生

TATAMI

KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ

☆☆☆

 

2015/08/30

荒川区芸術文化振興財団

棚川寛子

棚川寛子

おしいれのぼうけん

日暮里サニーホール

☆☆☆★

 

2015/09/03

範宙遊泳

山本卓卓

山本卓卓

幼女Xの人生で一番楽しい数時間

こまばアゴラ劇場

☆☆☆

 

2015/09/04

こまつ座

井上ひさし

栗山民也

國語元年

紀伊国屋サザンシアター

☆☆☆☆

 

2015/09/05

”inochi”2015〜考える手〜

塚田次実(genre:Gray)

塚田次実(genre:Gray)

譚詩~フェイク~

六本木ストライプスペース

☆☆☆★

 

2015/09/06

produce lab 89『官能教育』

マルケス/神里雄大

神里雄大

エレンディラ

新世界

☆☆☆☆

 

2015/09/07

玉田企画

玉田真也

玉田真也

果てまでの旅

アトリエ春風舎

☆☆☆★

 

2015/09/10

”inochi”2015〜考える手〜

黒谷都(genre:Gray)

西村洋一

顔のモノ語り

六本木ストライプスペース

☆☆★

 

2015/09/11

On7

古川健

日澤雄介

その頬、熱線に焼かれ

こまばアゴラ劇場

☆☆☆☆

 

2015/09/16

”inochi”2015〜考える手〜

岡本芳一/黒谷都(genre:Gray)

西村洋一、黒谷都

涯なし

六本木ストライプスペース

☆☆☆☆

 

2015/09/18

フジテレビジョンキョードー東京ローソンチケット

スティーヴン・シュワルツ、ロジャー・O・ハーソン

ダイアン・パウラス

ピピン

東急シアターオーブ

☆☆☆☆

 

2015/09/22

”inochi”2015〜考える手〜

大井弘子・千田庸子

大井弘子・千田庸子

ふ・ふふ・ふしぎだな

六本木ストライプスペース

☆☆☆☆

 

2015/09/25

木ノ下歌舞伎

近松門左衛門/木ノ下裕一

糸井幸之介

心中天の網島

こまばアゴラ劇場

☆☆☆☆☆

10/5にも観劇。

2015/09/27

三条会

三島由紀夫

関美能留

熱帯樹

ザ・スズナリ

☆☆☆☆☆

 

2015/10/09

Marc Labrèche

ロベール・ルパージュ

ロベール・ルパージュ

Needles and Opium 針とアヘン~マイルス・デイヴィスジャン・コクトーの幻影~

世田谷パブリックシアター

☆☆☆☆

 

2015/10/11

SPAC

メーテルランク

クロード・レジ

室内

楕円堂

☆☆☆☆☆

 

2015/10/18

Theatre des Annales

谷賢一

谷賢一

『従軍中のウィトゲンシュタインが・・・(略)』

こまばアゴラ劇場

☆☆☆★

 

2015/10/22

新国立劇場

スティーブン・ソンドハイム、ジェームス・ラパイン

宮田慶子

パッション

新国立劇場

☆☆☆☆★

 

2015/10/26

てがみ座

長田育恵

扇田拓也

地を渡る舟―1945/アチック・ミューゼアムと記述者たち―

東京芸術劇場シアターイース

☆☆☆☆★

 

2015/10/30

FUKAIPRODUCE羽衣

糸井幸之介

糸井幸之介

橙色の中古車

こまばアゴラ劇場

☆☆☆☆★

 

2015/11/15

青年団

島田曜蔵

島田曜蔵

銀河鉄道の蔵ノート

こまばアゴラ劇場

☆☆☆★

 

2015/11/15

青年団

平田オリザ

平田オリザ

忠臣蔵・OL編

こまばアゴラ劇場

☆☆☆★

 

2015/11/15

青年団

平田オリザ

平田オリザ

忠臣蔵・武士編

こまばアゴラ劇場

☆☆☆★

 

2015/11/16

青年団

平田オリザ

平田オリザ

走りながら眠れ

こまばアゴラ劇場

☆☆☆☆☆

 

2015/11/18

蒼井優 岡本健一 成河 中嶋しゅう

マクドナー

小川絵梨子

スポケーンの左手

シアタートラム

☆☆☆☆

 

2015/11/19

新国立劇場

チェーホフ

鵜山仁

桜の園

新国立劇場小劇場

☆☆☆★

 

2015/11/22

パリ市立劇場

イヨネスコ

エマニュエル・ドゥマルシー=モタ

彩の国芸術劇場

☆☆☆

 

2015/11/27

←ココカラ

バートレット

江尻裕彦

語りえぬもの Not Talking

グリーンエイミーカフェ

☆☆☆☆☆

 

2015/11/30

佐東利穂子、勅使川原三郎

勅使川原三郎

勅使川原三郎

ペレアスとメリザンド

カラス・アパラタス

☆☆☆☆☆

 

2015/12/01

綾門企画

綾門優季

綾門優季

汗と涙の結晶を破壊

アトリエ春風舎

☆☆☆★

 

2015/12/05

鳥公園

西尾佳織

西尾佳織

緑子の部屋

こまばアゴラ劇場

☆☆☆☆★

 

2015/12/05

メジャー・リーグ

ラシーヌ

青山真治

フェードル

東京芸術劇場シアターイース

☆★

 

2015/12/06

ギリヤーク尼ヶ崎

ギリヤーク尼ヶ崎

ギリヤーク尼ヶ崎

大道芸

成田山川越別院本行院

☆☆☆☆☆

 

2015/12/09

青☆組

吉田小夏

吉田小夏

海の五線譜

アトリエ春風舎

☆☆☆★

 

2015/12/11

レ・ボレアード、SPAC

パーセル

宮城聰

妖精の女王

北とぴあ

☆☆☆☆

 

2015/12/13

青年団の演劇入門

田野邦彦

田野邦彦

快楽の園

コミカレカフェ コンフォート

☆☆☆☆★

 

2015/12/18

新国立劇場

ラジヴ・ジョセフ

中津留章仁

バグダッド動物園のベンガルタイガー

新国立劇場小劇場

☆☆☆★

 

2015/12/19

角替和枝、美加理

マヌエル・プイグ

森新太郎

薔薇の花束の秘密

静岡芸術劇場

☆☆☆★

 

2015/12/30

DanieLonelys

ヒガシエイスケ

DanielaGreen

in the gool

DanielaGreen

☆☆★

 

 

ハッピーアワー(2015)

ハッピーアワー(2015)

hh.fictive.jp


上映時間 317分
製作国 日本
初公開年月 2015/12/12

  • 監督: 濱口竜介 
  • 脚本: 濱口竜介 (はたのこうぼう)野原位 (はたのこうぼう)高橋知由 (はたのこうぼう)
  • 撮影: 北川喜雄 
  • 音楽: 阿部海太郎 
  • 出演: 田中幸恵、菊池葉月、三原麻衣子、川村りら
  • 映画館:元町映画館
  • 評価:☆☆☆☆☆

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私が2015年に見た映画のなかで、最も素晴らしい作品だった。今年最後の映画鑑賞で会心の一作に出会うことができた。神戸が舞台のこの傑作を、神戸の映画館で見ることができてとても満足している。

港町神戸に住む30代後半の女性4人の友情のありかたを描く。

平凡至極に思える人生も実はけっこう波乱万丈だったりする。30代後半、人生の後半期に入るころ、ふと生活のなかでの小さな疲れ、無理の蓄積に気がついてしまうことがある。これまで社会関係のなかで自分を自分として成立させるのに貢献してきた欺瞞や嘘、口に出せなかった思いを、一度振り払い、人生を一度リセットし、「再生」したくなるような時がやってくる。自分の抱え込んでいるものをすべて率直に吐き出してしまいたい、吐き出すことで自分の人生を取り戻してみたくなる衝動に襲われる。でもどうやったら、そうしたことができるだろうか?

『ハッピーアワー』で私が何よりも感動したのは、様々な葛藤のなかで日々を生きる4人の女性が、自分自身としっかり向き合い、いろいろな感情の混沌を引き受け、そして自分自身の思いを表明する行動や言葉を真摯に少しずつ見出す過程が率直に描き出されていることだ。劇中、第一部のエピソードの核となるいかにもうさんくさい「ワークショップ」はそうした仕掛けの一つとして象徴的な意味を持っている。

ワークショップや朗読会などのイベントやその打ち上げの場面の精緻なリアリズムにもしびれた。中途半端な知り合いが場を共有し、互いを探り合うぎごちない雰囲気やイベントの参加者が実は企画者の「身内」ばかりという身もふたもない実情の暴露。場面設定やシーケンスの展開に容赦ないリアリズムがある一方で、棒読みに近いやり方で行われる議論の内容は、妙に高尚で文学的だったりする。朗読会のあと、急にアフタートークの相手として朗読された小説について語る生命倫理学者のテキスト分析の見事さには驚嘆した。

展開はスリリングで飽きさせない。そしてこれまで演技経験がないという4人の主演女優のたたずまいと美しさに惹きつけられた。彼女たちはいずれも美しい30代後半の女性だ。その美しさは確かに「プロ」の女優にはない、微妙ないびつさと崩れがあり、それが大きな魅力になっている。

この作品を、ロケ地である神戸の映画館、元町映画館で見られて本当によかった。70席ほどの小さな映画館だが、今日の上映は満席だった。この映画で映し出される神戸には、有名な観光ポイントは含まれていないけれど、まさしく神戸の人間が生活の場として実感できる神戸の姿が取り上げられている。そのことが、神戸出身の私にはとてもうれしかった。そしてこのローカルな映画が、ロカルノ、ナントなどの映画祭で国際的評価を得ていることを誇らしく思う。

 

 

恋人たち(2015)

恋人たち(2015)

koibitotachi.com


上映時間 140分
初公開年月 2015/11/14

  • 監督: 橋口亮輔 
  • 企画・プロデューサー: 深田誠剛 
  • 脚本: 橋口亮輔 
  • 撮影: 上野彰吾 
  • 美術: 安宅紀史 
  • 衣裳: 小里幸子 
  • 主題歌: 明星/Akeboshi 『Usual life_Special Ver.』
  • 出演: 篠原篤(篠塚アツシ)、成嶋瞳子高橋瞳子)、池田良(四ノ宮)、安藤玉恵(吉田晴美)、黒田大輔(黒田大輔)、内田慈(女子アナ)、山中聡(四ノ宮の友人 聡)、光石研(藤田弘)
  • 映画館:テアトル新宿
  • 評価:☆☆☆☆★

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三人の「恋人たち」(鉤括弧付で記したい)は、希望の持てない散文的な生活を送っている。ままならぬ無慈悲な現実と折合いをつけ、何とか人生の帳尻合わせをすることで人は生きていける。そんな人生でも生きている意味はある。そうしたことをまっすぐ優しく伝える傑作だった。ただ振り返ってみると篠原のエピソードは少々特殊過ぎるようにも感じる。三人の報われない恋人たちのエピソードで私が一番好きなのは、成嶋瞳子の恋だ。

黒田大輔、安藤玉恵、内田慈という小劇場でなじみの俳優たちが、素晴らしい存在感を示して、物語のなかに収まっているのも嬉しかった。

 

ベテラン(2015)

ベテラン(2015) VETERAN

veteran-movie.jp


上映時間 123分
製作国 韓国
初公開年月 2015/12/12監督: リュ・スンワン 

 

  • 脚本: リュ・スンワン 
  • 撮影: チェ・ヨンファン 
  • 音楽: パン・ジュンソク 
  • 出演: ファン・ジョンミン (ソ・ドチョル)、ユ・アイン (チョ・テオ)、オ・ダルス (オ チーム長)、キム・シフ (ユン刑事)、ユ・ヘジン (チェ常務)、チャン・ユンジュ (ミス・ボン)、オ・デファン (ワン刑事)
  • 映画館:シネマート新宿
  • 評価:☆☆☆☆★

 

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刑事アクションものには、殆ど食指が動くことがないのだが、twitterの私のTL上での絶賛ぶりに好奇心をそそられ見に行った。久々に韓国映画を見てみたくなったというのもある。典型的な刑事アクションものといっていい。勢いのある導入部の展開は素晴らしかったけれど、この手の娯楽作品は私のジャンルではないなあと思いながら見ていたのだけれど、プロローグ的部分が終わって本編的内容に入るとぐいぐいと引き込まれてしまった。

持てる者の横暴と持たざる者の悲惨という人の世のおぞましさ、切なさを描く主題が物語の基本骨格としてきっちり決まっている。主人公のベテラン刑事の妻が、買収されそうになったとき、思わず心が動いてしまった、と告白する場面には、金に流される弱さは、貧しき立場の者にときに強力に左右されてしまう現実が反映されているように思え、思わずほろりとなった。

この作品の成功は、悪役の徹底した極悪非道ぶりである。巨大企業の跡取りであるスマートな風貌の青年が、その金と権力にあかせて、卑劣な行為を行う。韓国人俳優の強い個性、強い演技がたまらない。類型的ながら、あらゆる登場人物が濃くて、魅力的だ。

密集した街中を走り抜けるスリリングなカーアクション、骨が折れる場面もしっかり映し出す暴力描写のエグさ、容赦なさも見事。こうした荒々しさも韓国映画っぽいエネルギーに満ちている。

クリスマスイブのがら空きの映画館だったが、壮絶かつ痛快な刑事アクションの傑作に大いに満足した。

アリスのままで(2014)

アリスのままで(2014)STILL ALICE

alice-movie.com


上映時間 101分
製作国 アメリカ
初公開年月 2015/06/27

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記憶だけでなく、知性、人格まで失われていく若年性アルツハイマーに罹った女性大学教員の話。病状の進行に従って表情がどんどん虚ろになっている様子がうまく演じられていた。最後が「LOVE」で終わるのは感動的。最後に残るのは愛であって欲しい。

サンドラの週末(2014)

サンドラの週末(2014)DEUX JOURS, UNE NUIT

www.bitters.co.jp


上映時間 95分
製作国 ベルギー/フランス/イタリア
初公開年月 2015/05/23

  • 監督: ジャン=ピエール・ダルデンヌ 、リュック・ダルデンヌ 
  • 製作: ジャン=ピエール・ダルデンヌ 、リュック・ダルデンヌ 、ドゥニ・フロイド 
  • 脚本: ジャン=ピエール・ダルデンヌ 、リュック・ダルデンヌ 
  • 撮影: アラン・マルコァン 
  • 美術: イゴール・ガブリエル 
  • 衣装: マイラ・ラマダン・レヴィ 
  • 編集: マリー=エレーヌ・ドゾ 
  • 出演: マリオン・コティヤール(サンドラ)、ファブリツィオ・ロンジョーネ(マニュ)、クリステル・コルニル(アンヌ)
  • 映画館:早稲田松竹
  • 評価:☆☆☆☆

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休職していたサンドラが復職しようとした週末、会社から解雇通知が届く。この解雇は職場の同僚の投票によって決まったというのだが、その投票が正当なやり方で行われていないということで、週明けの月曜に再投票が行われることに。サンドラは自らの復職のために、同僚の家を回って、投票を依頼する。過半数の票を獲得できれば彼女は復職できる。しかしサンドラが復職すると、ボーナスがなくなってしまう。

同僚の投票によって決まるというのはフランス(ベルギー?)流なのか? こんなときは、通常なら労組を通じて労使交渉して、解雇の撤回を求めるしか手段はないと思うが。当事者が一人一人同僚を回って、自分の復職を求めるというのは、つらすぎる。サンドラが猛烈なストレスで体調を崩してしまうのも当然だ。自分が復職すれば、ボーナスがでなくなってしまう。彼女の同僚たちも皆それぞれ貧しい生活をしていることが、映像から伝わってくる。結末はダルデンヌらしいリアリズム。サンドラの雇用継続に投票できなかった人たちが、より困っている弱い人たちだというのがとてもきつい。弱い者が弱い者をつぶし合うという痛ましい現実が提示される。しかし自らのために、当事者として精一杯行動したサンドラの表情は晴れ晴れとしていたのがとても印象に残る。

セッション(2014)WHIPLASH

セッション(2014)WHIPLASH

session.gaga.ne.jp

 

  • 上映時間 107分
  • 製作国 アメリカ
  • 監督: デイミアン・チャゼル 
  • 脚本: デイミアン・チャゼル 
  • 撮影: シャロン・メール 
  • 編集: トム・クロス 
  • 音楽: ジャスティン・ハーウィッツ 
  • 音楽監修: アンディ・ロス 
  • 出演: マイルズ・テラー、J・K・シモンズ、ポール・ライザー、メリッサ・ブノワ 
  • 映画館:早稲田松竹
  • 評価:☆☆☆☆

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痛快・爽快な音楽映画だった。サディスティックな鬼教員にいたぶられ、追い詰められながら音楽家として成長していく若者の話。スポーツや音楽や芸能の世界では、こうした嗜虐的で暴力的なやりかたで、弟子を追い込んでいく鬼のような人間は実際にかなりいそうな気がする。ただしそのほとんどは自分の才能への自信のなさゆえに、教える者-教えられる者の権力関係を利用して、人を支配することに喜びを感じているに過ぎない人間であるようにも私には思える。

最後の「逆転」の演奏場面の緊迫感は秀逸。引き込まれた。

FOUJITA(2015)

FOUJITA(2015)

foujita.info

  • 上映時間:126分
  • 製作国:日本/フランス
  • 初公開年月:2015/11/14
  • 監督: 小栗康平 
  • 製作: 小栗康平井上和子クローディー・オサール 
  • 脚本: 小栗康平 
  • 撮影: 町田博 
  • 美術: 小川富美夫 、カルロス・コンティ 
  • 音楽: 佐藤聰明 
  • 照明: 津嘉山誠 
  • 録音: 矢野正人 
  • 出演: オダギリジョー中谷美紀アナ・ジラルド、アンジェル・ユモー
  • 映画館:新宿武蔵野館
  • 評価:☆☆☆

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前半が藤田のパリ時代、後半が太平洋戦争の時代、日本にいる藤田。洗練された趣味の美しい絵はがきを思わせる映像が連なる。波瀾万丈の藤田の人生は小栗の自己陶酔的な映像美の枠組みとして利用されていて、ドラマは描き出すことは敢えて避けられている。訥々した単調で静かな台詞の語りかたの作為性に白けた気分になる。美しい絵はたくさんあったが、実にひとりよがりで退屈な映画だった。