閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

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初キャラメルボックス.開演前のロビーの客は地味な女性の姿が目立ち,「うう,こりゃ大失敗かもしれんなぁ」とひそかに覚悟を決める.
17歳の女子高校生が眠りから目覚めると,17歳の娘を持つ42歳の既婚女性になっていたという設定でお話がはじまる.主人公の女性を若い女優と相応年齢の女優の二人で演じる.このアイデアは実に効果的に機能していた.主人公の女性は高校教師になっていた.17歳の意識のままの彼女は「生活」のために,42歳の既婚十七歳の娘の母である己を引き受けることを決意する.17歳の少女そのままの健気さと率直さで彼女は四十二歳の自分を誠実に演じていく.そして高校教師としての自分を演じていくうちに失われた時間は別の形で蘇ってくる.
高校生活のエピソードは濃密に再現されていくが,よく消化整理されていてテンポがいい.こうした学生生活の再現は,あまりに甘く切なすぎるがゆえに,こちらのノスタルジーを強烈に刺激する.上演中涙ががぼろぼろとこぼれる.
37歳の男が見るにはあまり健全で毒のなさすぎる作品.音楽もこちらの趣味とはかなり異なるが,きわめて充実した演劇的感興を久しぶりに味わうことのできた.
客の入りは八割ほど.