- 主催・制作:松竹
- 作:シェイクスピア
- 訳:福田恆存
- 脚色:小池竹見
- 脚色・演出:加納幸和
- 美術:島川とおる
- 照明:塚本悟
- 音楽:深草アキ
- 振付:井出茂太
- 衣裳:前田文子
- 出演:尾上松緑,佐藤江梨子,保田圭,海東健,河相我聞,マイケル富岡,村井国夫
- 劇場:日比谷 日生劇場
- 評価:☆☆★
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花組芝居の加納幸和の演出,尾上松緑の主演に関心をそそられチケットを購入(さらに歌舞伎会のポイント稼ぎという目的もあったのだが).松緑が一般にどれくらい人気のある役者なのか知らないが,昨年の国立劇場での崇徳院や新橋演舞場での大蛇丸といったオドロオドロシイ役柄での演技に存在感を感じ,僕はかなり好きな役者である.
加納版『夏ノ夜ノ夢』では妖精パックを前面に出す.パックを演じるのは松緑である.しかし改変はラディカルなものではなく,全体としてみれば実にオーソドックスな『夏の夜の夢』だった.『夏の夜の夢』は群像劇であり,特権的な登場人物はいないのだが,ストーリーの核としてはアーデンの森で翻弄される四人の若い男女だろうし,パックによってロバの頭にされてしまうボトムがその次に位置する登場人物となるだろう.パックの役柄も重要ではあるが,ドラマの展開の中では副次的な役割である.松緑をフィーチャアしなくてはならないため,なんとかパックをドラマの中心に置こうとする努力のあとはみえるが,原作の骨格はいじっていないために,少々強引でとってつけたように思える場面になりがちだった.今更指摘するまでもないが松緑はやはり太りすぎ.主役としてのパックを演じるには可愛らしさが乏しく見ていていたたまれない感じだった.
脇の役者も下手ではないのだけれど,今ひとつアンサンブルとして見た場合,魅力に欠ける.
劇進行も重い.前半一時間,後半一時間四〇分の上演時間だったが,注意力を喚起されたのは最初と最後の舞踊のシーンぐらいで,とろとろとした単調な展開に後半は四〇分ほど熟睡.特に劇中劇の部分のテンポの遅さにはいらいらする.そしてこの劇中劇のギャグが決まらない.
冴えのない凡庸な演出に失望.最後のパックの口上による幕切れは,シェイクスピア劇の中で僕が最も好きな場面なのだが,この完璧な幕切れの台詞を,台無しするようなずるずるとしたしまりのないエンディングにもがっかり.
客の入りは七割ほどで空席が目立つ.
松緑を前面に出して現代劇をやるなら別の演目を選ぶべきだった.
保田圭の可愛さが救い.