閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

ピアニスト

人間の深層に巣くう性への妄執のおぞましさの容赦ない描写に戦慄する.
音楽生活のプレッシャーと同居する母親との過剰な共依存関係の中で,主人公のピアニスト(イザベル・ユペール)の表情は仮面のように硬直している.その仮面の下で抑圧されつづけた性欲はグロテスクなかたちで増大していく.彼女の抑圧された性はある美青年との出会いをきっかけに制御できなくなっていく.
奇形的な母娘の閉鎖的連帯,ピアニストに無慈悲な冷淡さ,歪んだ性的願望のリアルな表現に圧倒される.後味のきわめて悪い傑作である.