文学座 アトリエの会
森本薫作品二本立て
http://www.bungakuza.com/hanabanakadode07/index.html
<スタッフ>
作:森本 薫
演出:『華々しき一族』=戌井市郎/『かどで』=森 さゆ里
美 術:石井強司
照 明:古川幸夫
音 楽:池辺晋一郎(華々しき一族)
音響効果:秦 和夫(華々しき一族)秦 大介(かどで)
衣 裳:伊藤早苗(かどで)
舞台監督:三上 博
制 作:富田欣郎
票 券:最首志麻子
宣伝イラスト:オザワミカ
宣伝デザイン:森さゆ里
<キャスト>
『華々しき一族』
鉄風 飯沼 慧
諏訪 稲野和子
昌允 高橋克明
美礱 石井麗子
未納 高橋礼恵
須貝 押切英希
『かどで』
千蘩子 添田園子
仙二郎 中村彰男
やす子 倉野章子
外彦 浅野雅博『かどで』☆☆☆☆
『華々しき一族』☆☆☆☆★
文学座アトリエの会、森本薫作品二本立て公演を楽日に見る。
全くノーチェックだったがマイミクの激しい推薦を読んで関心を持った。
今回上演された「かどで」、「華々しき一族」とも、34歳で夭折した森本薫が23歳のときに書いた作品とのことだ。作者の早熟ぶりには驚かされる。
「かどで」は一時間、「華々しき一族」は一時間45分ほどの作品。どちらも面白かったが僕は二番目に上演された「華々しき一族」のほうが好きだ。女優が好みだったのと(石井麗子と高橋札恵)、失恋した弟役を演じた高橋克明の妙に冷静で客観的な状況分析を、すねたようにぶつぶつつぶやくという役作りが面白かった。
どちらも家族内の恋愛模様を描く風俗喜劇である。登場人物は徐々に明らかになってくる状況に大して受動的な反応を示すのだが、その連鎖反応によってパニック的状況に陥る展開が面白い。ラストはちょっとした不条理コントのようにすとーんと落とす。作者の恋愛のとらえ方はとてもシニカルで冷静なもののように思える。心理の揺れの描写さには、18世紀フランスのマリヴォーの恋愛劇の世界を連想させるような精妙さがある。「華々しき一族」はその恋のもつれ具合のドタバタ的状況にシェイクスピアの「夏の夜の夢」を想起させた。
知的な洗煉とシニカルな視線ゆえに、かっこよさを感じさせる戯曲だった。
「華々しき一族」では、下宿人の若い男に突然恋を告白された女主人が激しく動揺する場面、同じ女主人がその恋を家族に打ち明けるという精神の高揚が頂点に達する瞬間に暗転し、しばらくするとちょっとだけ巻き戻されて同じ場面が演じられるというクライマックス場面反復が効果的に使われていた。
こんな洒落た喜劇を書ける人がいたんだなぁ。