文学座アトリエ公演
http://www.bungakuza.com/savage/index.html
- 作:ジョン・パトリック
- 翻訳:安達紫帆
- 演出:上村聡史
- 美術:石井強司
- 照明:金 英秀
- 音響効果:藤田赤目
- 衣裳:伊藤早苗
- 出演:太刀川亞希,粟野史浩,藤粼あかね,藤堂陽子,助川嘉隆,斎藤志郎,中村彰男,山崎美貴,吉野由志子,松岡依都美,大滝寛
- 上演時間:2時間30分(休憩15分)
- 劇場:吉祥寺シアター
- 評価:☆☆☆☆
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作者のジョン・パトリックはピューリッツアー賞受賞作家で映画脚本も手がけているが,僕がその作品に接するのは今回が初めてだった.作品は1950年に初演された.
超高級なアメリカの精神病院が舞台.さまざまな年代の男女の患者が集まるロビーは,病院というよりは贅沢な邸宅のシックな応接間といった感じだ.ここに滞在する人間はみな心の病を抱えているが,それぞれが抱える傷を互いにいたわりあい,穏やかで落ち着いた雰囲気が漂っている.ここにアメリカでも有数の資産家の未亡人が,義理の子供たちによって強制的に入院させられる.これがサヴェッジ夫人.彼女が本当に狂っているのかどうかは最初のうちはよくわからない.まともなことを言っているようでもあり,ちょっとエキセントリックなところもあるようである.しかし先に入院していた「住人」に対しては鹿野は温厚で細やかな心遣いを示す.彼女は施設の入院患者の信頼をたちまち獲得する.
このサヴェッジ夫人が莫大な資産を隠し持っていることが判明し,欲深な義理の子供たちがその資産の隠し場所を聞き出そうとるのだが...というのが物語の設定.
穏健で品のよいユーモアのあるウェルメイド喜劇の秀作.文学座の俳優たち,そして演出はきっちりとした楷書体で人物の類型をしっかりと伝える.心をほんわかとさせるような心地よい雰囲気の芝居なのだけれど,昨夜『人形の家』のような強烈な印象をもたらす作品を見てしまったあとなので,ものすごく物足りなく感じる.
最後の場面の演出は,ちょっとした意外性もあり,やさしさに満ちていてとてもよかった.