閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

ザ・パワー・オブ・イエス The Power of Yes

燐光群
http://www.alles.or.jp/~rinkogun/Next.html

  • 作:デイヴィッド・ヘアー David Hare
  • 訳:常田景子
  • 演出:坂手洋二
  • 美術:島次郎
  • 照明:竹林功
  • 衣裳:宮本宣子
  • 音響:島猛
  • 出演:藤井びん 鴨川てんし 川中健次郎 猪熊恒和 大西孝洋 田中茂弘 John Oglevee 杉山英之 伊勢谷能宣 西川大輔 鈴木陽介 橋本浩明 中山マリ 南谷朝子 松岡洋子 樋尾麻衣子 安仁屋美峰 渡辺文香 桐畑理佳 横山展子 矢部久美子 根兵さやか
  • 上演時間:2時間
  • 劇場:下北沢 ザ・スズナリ
  • 評価:☆☆☆☆
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リーマン・ショックを契機とする世界的金融危機を演劇で表現した舞台というチラシの文章にちょっとひるむ。経済問題には私はまったく疎い。果たして理解できるだろうか。
多数の聞き慣れない固有名詞、金融用語が飛び交う膨大な情報量を含む作品だった。綿密な取材に基づくドキュメント・シアターで、ロンドンの金融市場、政策に関わる実在の人物が登場人物である。作者であるヘアー自身が取材する様子がそのまま芝居になっている。
正直、金融商品など語られている内容については私は理解できないことが多かった。しかしにも関わらず非常に興味深い舞台だった。面白いというよりも空恐ろしい感じがしたのだが。金融経済という現代の社会活動のメインストリームで働く優秀な人たちが、ああいった無責任でモラルの欠如したやりとりを繰り返している現実を芝居を通して把握することができた。世界は肥大する富への欲望に繰られ行動する彼らのゲームによって弄ばれているようなものだ。そして末端であるわれわれもこのゲームの余波に必然的に巻きこまれてしまう。アメリカのサブプライム・ローンの崩壊を取材したマイケル・ムーアの『キャピタリズム』の内容と重なる部分が多い。
日本社会を題材としたドキュメンタリー映画、あるいは演劇を見てみたい。