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松尾スズキがホスト役の対談集．対談相手は演出家，役者という演劇人のみ．芝居のあとの「アフタートーク」の類がなれ合いの雑談に終始し面白いと思えることが滅多にないように，こうした「芸談」になると照れがでるのか，この対談集の内容も今ひとつさえないものが多い．
腹を抱えて笑ったのは中村勘九郎（現勘三郎）との対談で，こうした対談上でも勘九郎が「プロ」に徹して，歌舞伎役者の世界の異常さ，グロテスクさをからっとした笑いで紹介していた．
うーん，いいひとだなぁ，なんて優しいのだろうと思ったのは串田和美．競争世界で「負けて」しまった人への視線には，我が身を思い思わずほろりとする．「勝ち組」のひとでみじめったらしい「負け組」に対してこうした繊細な優しさを持っている人は珍しいように思う．もちろんこの優しさは自分が勝ち組であることの優越感の裏返しでもあるのだろうけど．成功して生き残ることばかり教え続けられていることは社会のゆがみのひとつだ．大半の人は夢半ばで負けていく．負けてしまったひとはその時点からずっと傷ついていないといけないのだろうか．
