閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

カルテット

http://www.tpt.co.jp/

  • 作:ハイナー・ミュラー
  • 台本:広田敦郎
  • 演出:木内宏昌
  • 美術:磯沼陽子
  • 照明:笠原俊幸
  • 出演:大浦みずき、千葉哲也
  • 劇場:森下 ベニサン・ピット
  • 評価:☆☆★
                                          • -

マチネ公演。観客は年配の人が中心でほぼ満席。
1000円で購入したプログラムには上演台本が掲載されている。テクストはラクロの『危険な関係』に基づくもの。舞台設定はフランス革命前夜のサロン/第三次世界大戦後のシェルター。上演台本の冒頭部のモノローグに目を通しただけで、「厳しそう」な舞台が予想される。一組の男女が互いの役割を入れ替えたり、他の人物を演じたりしながら、性愛に関する詩的で独白的な台詞を投げかけ合う。
わずか一時間強の芝居にもかかわらず、開始早々猛烈な睡魔に襲われる。完全に眠ることはなかったけれど、ほぼ半睡状態のままの観劇。全く僕はこの手の難解さに堪え性がなくなってしまった。特に寝不足でもなかったのだけど。思わせぶりな台詞が、脳の表層部分を上滑りしていく。誘眠性の極めて高いすかした雰囲気の芝居だった。台本の言葉じたいが舞台言語としてはけっこうきついのだが、こうした言語を敢えて使いたいのであれば、それ相応の工夫が欲しいところだ。ヴァルモン役の千葉哲也のオカマ演技に一部観客が受けていたけれど。僕は今日はたるい舞台上の展開よりも、隣に座ったフェロモンをがんがん放出しているお姉さんのほうが気になってしかたなかった。色っぽさの「気」を感じてしまったのは、こちらも禁欲生活が続いているからだと思う。

眠気に襲われたのはぼくだけで、ちゃんとわかっている人間には知的刺激に富んだ舞台だったのかもしれない。おばさまの観客が多かったのだけど、わかりにくい芝居に僕には思えたのだが、彼女たちの反応は悪くなかった。こっちはもうろうとした頭でぼーっと眺めているだけの一時間。お金がもったいない。
舞台をみるとやたらに眠りに引込まれることがけっこうあるけれど、こちらの体調や理解能力以外の誘眠要素ってのがあると思う。単調な音の連続と暗闇ってのは要因としては大きいとおもうけれど、舞台・脚本の作り方にもポイントがあるはず。誘眠の技術論みたいな研究はないのだろうか。