閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

熊野/弱法師(三島由紀夫『近代能楽集』)

三条会
http://homepage2.nifty.com/sanjokai/

  • 作:三島由紀夫
  • 演出:関美能留
  • 出演:大川潤子、榊原毅、立崎真紀子、橋口久男、中村岳人、関美能留/桜内結う
  • 劇場:千葉 三条会アトリエ
  • 上演時間:1時間30分(二本で)
  • 評価:☆☆☆☆★
                                                                                    • -

風邪ひきで体調悪かったけれど、雨の中、千葉まで行って見てきた。そのかいは十分あった。

三条会の『近代能楽集』はいずれもきわめて独創的だ。しかしあのデフォルメはしっかりテクストを読み込むことができてこそ可能であるように思う。奇抜ではあるが、同時にきわめて正統的な三島のテクストの解釈でもあるようにも感じられる。『近代能楽集』のなかでは印象が弱かった「熊野」があんな素敵な作品になるとは。。。

『熊野』は大川潤子、榊原毅、立崎真紀子、中村岳人そして客演の桜内結うが出演。大川潤子、榊原毅の両者の緊張感に満ちたことばの対決場面がとてもいい。
『弱法師』の登場人物はプログラムでは「?」となっていた。確かに意外な役者がこの盲目の美少年をめぐる茶番劇を茶番として演じる。しかしその茶番は次第に、物語の外側の現実と内側の虚構が交錯する真摯なことばによる対決へと変容していく。

公演の水準が安定しているのも驚くべきことだと思う。先月、風邪で「道成寺/班女」を見落としてしまったのが本当に残念だ。三条会による『近代能楽集』全作品連続上演は、疑いようもなく今年の演劇界のもっとも大きな収穫の一つだと僕は思う。
この日の「熊野/弱法師」の観客は30人弱だった。全日程でも観客数はせいぜい200人ぐらいだろう。この充実した公演に立ち会うことのできた200人足らずの人間の一人でいられたことを幸運に思う。

来年二月のザ・スズナリでの『ロミオとジュリエット』も本当に楽しみだ。三条会の『ロミ・ジュリ』は1年半ほど前、千葉のどっかの市の会館に見に行った。市民会館会館記念かなにかの公演で、観客は「普通の」老若男女も多かった。笑いの多い公演だった記憶がある。
http://d.hatena.ne.jp/camin/20070702
スズナリではこのシェイクスピアの恋愛悲劇はどんな具合に変容しているだろうか。